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コラム

2022/12/01
学生と日々接する中で感じていることや思いなど、
毎年3人の東海大学の教員がそれぞれの視点からつづるリレーエッセイ。

カウンセラーもがまださんと!

文理融合学部地域社会学科、ティーチングクオリフィケーションセンター 蔵岡智子 講師

 

本稿ではカウンセリングの仕事やこころのケアについて書いてきた。今回はカウンセラーとして運営にかかわっている熊本校舎の学生相談室と自分の研究について書きたい。熊本校舎の学生相談室は、常勤相談員1人、週1回ずつ勤務する臨床心理士(カウンセラー)5人に加えて、今年度から念願のキャンパス・ソーシャル・ワーカー(CSW)に着任していただいた。CSWは、学生と周囲の環境に働きかけ、支援を行う社会福祉の専門家である。カウンセラーは、面接内で気持ちを整理するなど内的な作業のサポートが主だが、CSWは生活環境や家族・対人関係、そして大学内の学部学科や関係機関といった周囲との関係に注意を向け、支援ネットワークの調整、構築を行う。

 

簡単にいうと、カウンセラーがこころの中、ソーシャルワーカーが外部を扱う、といった感じである。実際にはそれぞれの専門性が重なる部分も多く、これまではカウンセラーが必要な外部との調整を担って、なんとかやってきた。しかし、着任していただくとCSWのフットワークの軽やかさと調整力の高さには舌を巻いた。大学というシステムの特性を捉え、そこで働く人々の力動をアセスメントしながら、しなやかにそして確実に介入し、支援ネットワークを構築していく。「ソーシャルワーカーをなめんなよ!」と言われた気分である(決して言われてない)。

 

かといってカウンセラーが働く現場で、ソーシャルワーカーが常にペアとなって協働してくれるわけではない。「カウンセラーもがまださんと!」(熊本弁で“がんばる”の意味)と、現在取り組んでいるカウンセラーの研究がこのあたりである。

 

相談者が持ち込む多くの問題が周囲の人々や環境と密接に関連しているにもかかわらず、これまでの理論は、それらを個人の内面的な課題として支援につなげる傾向が強かった。個人の課題として帰属させると、現存の社会システムのひずみそのものを放置して個人だけに対処を迫ることにもなりかねない。これらを反省しつつ、カウンセラーの役割を拡大して、環境により積極的に関与し行動する姿勢を専門性の一部として位置づけることができないか? ということを考えている。次回、最終回はこのあたりについてもう少し詳しく述べたい。(筆者は毎号交代します)

蔵岡智子(くらおかともこ)

1976年熊本県生まれ。熊本大学大学院教育学研究科修了。臨床心理士・公認心理師。専門は心理学。

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