コラム
2022/07/01
4月号の本稿では、大学における効果的なアクティブラーニングを実現するために失敗が評価される「教育システム」の開発と、全体を見極める「システム思考」の重要性について論考した。本稿ではさらに具体的に考えたい。
大学教育といっても専門分野や授業内容がさまざまで、文系と理系でも異なる。理系は実験室で、理論に期待される「再現性」に必要な問いである「どのように」(how)、「いつ」(when)、「なぜ」(why)を確かめながら実践的に学ぶことが可能である。一方、文系は抽象度が高く、学生が授業で得た知識を実践的に学ぶことは容易ではない。
経営学の授業では、抽象度の高い事象を「事例」を用いて説明する。この手法では抽象的な概念を具体化し、学生には「再現性」の重要性を中心に学んでもらう。こうした手法は学生が成長していく中で教養を高めるために一定レベルの知識が必要であるという意見に異を唱えない。しかし、福澤諭吉は、『学問のすゝめ』で「学問の要は活用にあるのみ。活用なき学問は無学に等し」と述べているように、学問そのものは手段である。学問を活用することに意義があり、学問そのものを目的化するのは回避すべきだろう。
学生たちには知識を集積するのではなく、知識を実践的に活用し、スキルとして身につけてもらうように指導する必要があろう。経営学は特にそうである。経営学は人間学とも呼ばれ、専門知識がベースとなるスキルはもちろんだが、人間とかかわる上で必要とされるスキルをバランスよく身につけることが求められている。前者は組織行動論、戦略論、マーケティング論、会計・ファイナンス、IT、デザイン思考などが挙げられる。後者は人間関係を構築するのに必要な社会情動的スキルである目標の達成、情動の抑制、他者との協働などであ
る。これからの大学における経営学教育は知識集積型から知識活用型へ、すなわち身をもって学ぶ「体験型教育」、「理論と実践」を結びつける場としてスキル重視教育モデルの革新が求められている。(筆者は毎号交代します)
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