コラム
2025/08/01
7月20日に投開票が行われた参議院選挙。皆さんは投票に行っただろうか?
今回マスコミをにぎわせたキーワードは「SNS」や「バラマキ」、そして「ポピュリズム」だった。こうした現象は、有権者の政治的無関心(あるいは棄権主義)の上に成り立つとされており、全世界に共通した現象だとも言われている。私の専門とする南フランス・プロヴァンス地方でも同じようなニュースが報じられていた。
マルセイユの巷(ちまた)をにぎわす男——。その正体は、フレデリック・コラール。本職はマルセイユ大学の医学教授で、来年の市議会議員選挙に立候補を予定している。左派の一部から右派までさまざまな党派を統合し、フランス第二の大都市・マルセイユの悪化する治安・衛生・住宅状況などの改善を目指す。『ル・モンド』紙では、「右派と中道派を苛立たせる候補者」という見出しで紹介し、旧態依然たる市政を医者として“治療”しながら、地元政界に新風を吹き込むそうだ。
このマルセイユで7月には、大規模な山火事が発生した。40度を超える熱波に襲われ、高速道路上で車の火災が起き、時速70キロを超える強風にあおられて大規模な火災につながってしまった。
フランス南東部で地中海に向かって吹き抜ける局地風は、「ミストラル」と呼ばれる。北の高気圧勢力が強まると、地形の影響も相まって出現する。私が前回の本コラムで取り上げた画家・フィンセント・ファン・ゴッホは、ミストラルが強く吹くと、イーゼル上で絵を描くことができないと嘆いた。
マルセイユを舞台にした一見関係のないようにも思える2つのニュース。私は、つながりを感じずにはいられなかった。私の研究対象であるプロヴァンスの詩人こそ、もう一人の“フレデリック”にして、“ミストラル”である。「フレデリック・ミストラル」(1830―1914)。彼は地域主義運動に生涯を捧げ、大叙事詩『ミレイユ』をまとめたプロヴァンス語復興への貢献から、1904年にノーベル文学賞を授与された。
9月の誕生日には、生まれ故郷の小さな村に世界中からファンが集まる。彼は今のマルセイユをどう見るのだろう——今年はいつもと違う眼差しを持って祭典に参加することになりそうだ。 (筆者は毎号交代します)
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