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コラム

2023/01/01
学生と日々接する中で感じていることや思いなど、
毎年3人の東海大学の教員がそれぞれの視点からつづるリレーエッセイ。

まず隗より始めよ②

経営学部経営学科 アルマズヤッド オスマン 講師

 

経営学を体験し、理論と実践のギャップを認識して理解を深めるために、当研究室では2年間で4つのチーム(企画・実行、知識創造、メディア、デザイン)を経験できるプログラムを運営している。

 

例えば企画・実行チームは、昨年5月に研究室での1泊2日のキャンプ企画を実行した。「いかに計画通りに動くか」を考え、スケジュール管理、役割分担、リーダーシップの取り方、リスクマネジメントなど身をもって学んだ。知識創造チームは、起業家らを対象としたポッドキャストを立ち上げ、脚本、ゲストの招待文作成、機材の選定、照明の設定、音声の調整、撮影、動画の編集も行い、チーム内のコミュニケーションの大切さや議事録の重要性、目標達成の難しさを体験している。メディアチームは毎週行う研究会の内容をSNSなどで発信し、ルーティンワークやシステム構築の大切さを学び、デザインチームは活動の告知・ポスターなどを制作している。

 

学術的な側面については、毎週の経営理論の輪読のほか、昨年度にはファミリービジネスにかかわる課題などを自らの視点で見つけ、計6社のマネジメント層(代表取締役・社長ら)にインタビューし、リサーチ設計、データ分析、報告書づくり、成果発表などを実施した。今年度は奈良県東吉野村でフィールドワークを行い、従来の経営学の教育のように完成した商品という「結果」に着目するのではなく、「出発点」である作り手の哲学や生き方、生活などに密着して観察し、商品開発に至った思想や経緯を多面的に学ぶことを目指した。

 

こうした取り組みを通して、学生の意識に変化が見られた。キャンプのときは「“真に学べるものは教室ではなく外にある”という先生の言葉を実感できた」とマネジメントの本質に気づき、東吉野のフィールドワークでは、「手を動かして作品を作っている時間はほんのわずかで、人と会ったり、話したり、見たりする時間が仕事なのだと感じた」と語っていた。「弱い紐帯の強さ」という経営学によく登場するネットワーク理論を現場で実感してもらった。従来の経営学教育と異なるアプローチを目指すには時間と労力を費やす必要があるが、やりがいがあり、千里の道も一歩からというようにこれからも研ぎ澄ましていきたい。(筆者は毎号交代します)

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