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コラム

2021/02/01
学生と日々接する中で感じていることや思いなど、
毎年3人の東海大学の教員がそれぞれの視点からつづるリレーエッセイ。

趣味を通して世界を広げる

農学部応用動物科学科 伊藤秀一 教授

「竿先にある糸の先端には魚が、竿の手前には馬鹿がいる」

「釣りとは?」を表現したフランスのことわざだそうです。私は釣り歴40年なので、○○歴も40年といえるでしょう。魚を持ち帰ることが目的ではないので「その魚おいしいよ。食べれるのにもったいない(“ら抜き言葉”で言われる場合が多い)」と、よく言われるのですが、魚が食べたいなら魚屋さんへ行くことをオススメしています。釣りたての魚は歯応えだけで味がないですし、交通費・釣り具代を考えると、魚は買ったほうが安くなります。

つまり「釣りに行くこと」自体がもったいない行為です。そもそも魚がいなくなったら釣りという趣味がなくなりますから、殺すほうがもったいないと思ってしまいます(その場所の資源量によりますが……)。

その無駄な行為である趣味の釣りですが、実際にはいろいろなことを教えてくれました。美しい日本の自然を知るきっかけになりましたし、その素晴らしい自然が破壊されていくことも体験しました。

多くの国では趣味の釣りにも規則があり、産卵期や減っている魚は殺せないことも知りました。「これはいらない魚だから」と、小さな魚や食べない魚を無駄に殺して捨てていく釣り人も見ました。そもそも魚を釣るという行為は趣味にしてもいいのか? と真剣に考えることもあります。しかし、釣り場の自然を体験し、無駄なことや有益な(と自分では思い込んでいる)ことを考えるうちに、動物や環境への興味がわいて今の自分の研究分野を選んだのは間違いありません。

この連載の最後に「釣り」について書いたのは、もちろん「皆さん釣りをしましょう」ではなく、(月並みな言い方になってしまいますが)趣味を持つということは、自分の尺度をつくるという意味でも重要だと思っているからです。それは部活などの「ある程度レールが敷かれている」ことではなく、生涯を通して自分で世界を広げていけることが大事だと思っています(部活を辞めたらその競技や音楽活動とは無縁になるという話はよく聞きます)。

「やりたいことが見つからない」という学生さんも多いと思いますが、何かを始めることでそれが見えてくるかもしれません。

(筆者は毎号交代します)

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