コラム
2019/05/01健康学部健康マネジメント学科 古城隆雄 准教授
保育園に入れない待機児童の問題は、ご存じだと思う。待機児童を解消するため、政府は保育園の増設や保育士の給料引き上げに取り組んでいる。企業も出産や育児が原因で退職しないよう、短時間勤務や在宅勤務、残業の抑制等に取り組んでいる。
さて、これらの対策で少子化は止められるだろうか?
残念ながら、止められないだろう(効果は一定程度あるだろうが)。社会や私たちの考え方が根本的に変化しなければ難しいからだ。
簡単にいえば、平均して女性一人あたり2人以上の子どもを産めば、少子化を止めることができる。しかし、2017年では、女性全体では平均1.43人だった。
この原因は、子どもがいない家庭や一人っ子の家庭の増加ではない。確かにこれらの家庭は増加傾向にはあるが、結婚世帯の子どもの数は、安定して2人以上だった(10年に初めて2人を下回った)。
では、何が主因か。それは、女性の非婚化である。実際、15年の女性の生涯未婚率は約14%、男性は約23%であった(男女間の差は、一部の男性が何度も結婚するため)。
さて、ここから考えられる直接的な少子化対策は何か? 素直だが恐ろしい解答は、「女性に結婚を促すこと」である。しかし、これだけ自由な世の中で、誰が結婚を強制できるだろうか。
他の解決策はないだろうか。国の調査では、結婚意思を持つ男女の約4割が結婚資金を障害に挙げている。実際、低所得の男性ほど未婚率が高い。これからは二人で家計を支える考え方に変わる必要がある。共働きのほうが世帯収入は多く、家計が安定する利点がある。
もう一つは、法律婚以外の多様な家族のあり方を認めることである。出生率が回復しつつある北欧や西欧では、婚外子の割合が半数(日本は約2%)をこえている。誤解があるかもしれないが、子どもに対する両親の責任はどの国でも重い。ただ、家族の形によらず、子どもを支援する仕組みが整っているのである。
保育環境の充実や働き方改革等の対策は重要だ。それに加え、夫婦ともにライフスタイルに応じて働き続け、多様な家族のあり方を認める社会にならなければ、少子化は止められないかもしれない。(筆者は毎号交代します)
こじょう・たかお 1979年神奈川県生まれ。専門は地域医療政策、社会保障論。
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