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コラム

2019/03/01
学生と日々接する中で感じていることや思いなど、
毎年3人の東海大学の教員がそれぞれの視点からつづるリレーエッセイ。

無意識に持つ固定観念

工学部精密工学科 内田ヘルムート貴大 講師

日本の国際化」の定義にはさまざまなものが考えられる。日本の人材やコンテンツが世界に出て行く流れをそう呼ぶこともできるし、世界から日本国内へと人材やコンテンツが入って来るという流れをそう呼ぶこともできるだろう。たとえば日本の「Manga」をきっかけに日本に興味を持ち言葉や文化に親しむ人は年々増えており、前者の「流れ」に該当する。私が住んでいたドイツでもConnichi(コンニチ)という2万5000人規模のイベントが毎年のように開かれており、その規模の増加には圧倒された。他方、さまざまな社会的背景から、外から内への「流れ」も加速している。しかしながらこの20年間、多数の日本人の意識や固定観念からの脱却はその変化に追いついていない。

テレビ番組では、日本語でない言語を話す人の生の声は吹き替えられることが多い。「意訳」がテロップで表示され、元の言語でのコメントと本意が異なっている場合もある。日本についてインタビューされる「外国人」は、欧米系の場合が多く、訪日観光客や在留外国人におけるその比率と比べると明らかに多い。
 
コマーシャルで採用される場合は、どういうわけか日本語が下手であるという設定がいまだに多い。アジア系の観光客は多くが「爆買い」するものだと扱われている。最近では、世界大会で優勝した日本人のスポーツ選手が日本語を得意としていなかったことから、一部で論争が起こっていたことは記憶に新しい。
 
その背景には、「日本人」やそれ以外の存在はこういうものである、という思い込みに基づく一種のレッテル貼りのようなものが垣間見える 一昔前にはヨーロッパでも「日本人」はこういうものだ、という固定観念があった。一眼レフをぶら下げ、すごい勢いで観光地を写真に収め、買い物をして去って行く、という類のものだ。その対象は近年、他のアジア諸国からの観光客にシフトしているが、これらのレッテルは当然ながら正しいとは言えず、改められるべきであろう。
 
訪日観光客の数や日本における在留外国人の数は今後も増加すると予想される。他国の文化を互いに理解するよう努めることが多文化共生へのスタートであるが、その前に各自が無意識に持つ固定観念を払拭することが強く求められている。

(筆者は毎号交代します)

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