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コラム

2016/11/01
学生と日々接する中で感じていることや思いなど、
毎年3人の東海大学の教員がそれぞれの視点からつづるリレーエッセイ。

ステレオタイプを考える

教養学部国際学科 荒木圭子 准教授

以下の文章を読んで、状況を想像してみてください。

「路上で交通事故がありました。大型トラックがある男性とその息子をひきました。父親は即死しました。息子は病院に運ばれました。病院の外科医は『これは私の息子!』と悲鳴を上げました」

すんなり納得できたでしょうか?

これは、ジェンダーに関するステレオタイプを試すアクティビティーです。

ジェンダーというのは、文化的・社会的に規定された性のあり方、すなわちその社会で決められた「女性はこうあるべき、男性はこうあるべき」といったような性のあり方です。たとえば、女性は家事・育児をする、男性は外で働くといったようなものが挙げられるでしょうか。

最初の文章では、外科医が母親であることに気づかないとなかなか意味が通りません。多くの人が最初は「あれ?どういうこと?」と思ったのではないでしょうか?

実際、日本における外科医の中での女性の割合は、2014年時点で6.7%(形成外科医、整形外科医を除く。日本医師会男女共同参画委員会、2014年)とのことです。

この数字を見ると、「外科医」と聞いたときにまず男性を思い浮かべるのは、合理的な判断だといえます。しかし、男性が100%ではないときちんと認識していないと上記の文章を理解できず、いつまでもモヤモヤすることになります。

日本にはこのようなジェンダーに基づくステレオタイプが、さまざまなところで見られます。たとえば、テレビコマーシャル、教科書、絵本などなど。

最近、私が気になっているのは、『桃太郎』などの昔話で、必ず「お爺さんとお婆さんが……」と、お爺さんが最初に出てくることです。なぜ「お婆さんとお爺さんが……」ではないのでしょうか。

ステレオタイプは、自分の可能性を狭めてしまうこともあります。「男性の外科医」というステレオタイプが強ければ強いほど、外科医と女性が意識の中で結びつきません。すると、外科医になりたいと思う女の子は少なくなってしまいます。

自分の可能性を広げるためにも、身の回りにあるステレオタイプについて考えてみませんか?
(筆者は毎号交代します)

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