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研究

2023/05/01

【医学部付属病院】世界初、心室頻拍の重粒子線治療

心臓突然死を防ぐ第4の選択肢

「不整脈に苦しむ多くの患者さんに

この治療を届けたい」と吉岡教授

医学部付属病院副院長の吉岡公一郎教授(循環器内科)らの研究グループが、世界初となる難治性致死性心室不整脈(心室頻拍)に対する炭素イオン線(重粒子線)を用いた体外放射線治療を、量子科学技術研究開発機構QST病院で2月に実施した。
 
難治性致死性心室不整脈は心臓突然死を招くきわめて重篤な疾患。心室頻拍の治療は薬剤とカテーテルアブレーション、植込み型除細動器の3つが主体だが、症状によってはいずれも受けられない場合がある。
 
こうした中、第4の選択肢として期待されているのが、主に腫瘍疾患に適用されている体外放射線治療。麻酔が不要で照射時間がきわめて短く、患者の負担が少ないのが特長で、体幹部定位放射線治療(SBRT)では正常臓器への影響を最小限に抑えながら、標的に対する正確で高線量の照射が可能になっている。

 

炭素イオン線による

難治性致死性心室不整脈治療のイメージ

(画像提供=量子科学技術研究開発機構)

吉岡教授らは、2019年に医学部付属病院で心室頻拍に対するX線を用いたSBRTを日本で初めて実施。優れた治療成績を報告しているが、X線は標的の周囲に影響を及ぼすため、標的が冠動脈に近接している場合は難しいことが課題となっていた。
 
そこで、吉岡教授とQST病院などによる研究グループ(※)では、放出エネルギーが調整でき、正常組織への影響を減らせる炭素イオン線に着目。研究を重ねて綿密な臨床実施計画を策定し、今回の治療に至った。

 

X線と炭素イオン線の比較

吉岡教授は、「治療時間は準備を含めて約1時間、照射時間は8分で、患者さんは4日後に退院。治療中も治療後も有害事象はなく、引き続き慎重に経過を観察中です。X線のリスクが高い不整脈の症例に対して新たな治療オプションを追加できたことは大きな前進。今後は、患者さんの病態や心臓ターゲットに応じたX線と炭素イオン線の使い分けを検討していく予定です」と話している。

 

※医学部付属病院における研究分担者=◆循環器内科:網野真理准教授(量子科学技術研究開発機構主幹研究員)◆放射線治療科:株木重人講師、国枝悦夫客員教授、菅原章友教授、福澤毅助教、黒木俊寿助教◆画像診断科:橋本順教授◆循環器内科:伊苅裕二教授、栁下敦彦准教授、坂間晋講師 他

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