研究
2025/10/01
医学部付属八王子病院で今秋から、「膝下血管病変向け薬剤溶出型ステントシステム」の医師主導治験が開始される。医学科専門診療学系画像診断学領域の長谷部光泉教授(同病院血管内治療センター長)らが開発した“日本発、世界初”の医療機器の安全性や有効性の評価が目的。8月27日に東京都内でオンライン併用の記者説明会が開かれ、新聞社や専門誌の記者ら多数が参加した。
① 狭窄した血管内にステントを留置すると
直後から血流が回復する②留置後のステント
断面の拡大像。最外層のポリマーから再狭窄を
防ぐ薬剤が溶出されると同時にポリマーが分解。
ポリマー層下のダイヤモンドライクカーボン層
が血栓を誘発する血小板の付着を防ぐ ③ポリ
マー層が溶けると同時にダイヤモンド層に血管
内皮細胞が付着して表面を覆い血管修復が進む
④ステントは1層の内皮細胞で完全に覆われス
テルス化(隠れた状態)する(資料提供=長谷
部教授)
動脈硬化で下肢の血管が狭窄・閉塞して血流が滞る下肢閉塞性動脈疾患の潜在的な患者は、世界に2億人以上と推定され、症状が悪化して下肢の切断に至った場合には5年後の生存率が5割を下回ることが知られている。
膝上の血管に対しては、バルーンカテーテルを用いて血管を広げる治療や外科的なバイパス手術、ステントと呼ばれる網目状の金属の管を血管内に留置する治療が行われているが、細くて石灰化などの病変が多い膝下の血管への適用は難しく、治療後に再狭窄するケースが多いため、有効な治療法が切望されていた。
この課題に対応するために長谷部教授らが開発したのが、直径5㍉以下の細い血管内に留置できる「BioStealth™Stent」(バイオステルス・ステント)と、これを安全に留置するデリバリーシステム。
血管の屈曲や変形に耐えられるようコンピューター・シミュレーションで設計したニッケルチタン製の薄型ステントの表面を、血栓の付着を防ぐナノレベルのダイヤモンドライクカーボンでコーティングし、さらに再狭窄を抑える薬剤を内包したポリマーで覆った。 薬剤の効果と、生物に「異物」と認識されないダイヤモンドの特性により、ステントは1層の血管の内皮細胞で覆われてステルス化(隠れた状態)し、長期間の留置が可能になる=図参照。
このステントには、研究チームが開発した3つの特許技術が搭載されている。
確かな根拠ある治療を いち早く患者へ
記者説明会には、大上研二医学部長をはじめ、八王子病院の野川茂病院長、治験調整医師を務める長谷部教授、治験責任医師の小川普久准教授が出席。ステントの特長や治験の概要を解説した。
長谷部教授は、「このステントは、従来の血管を拡張させる機能を持ちながら、体内で異物と認識されにくく、狭窄や閉塞が起こりにくいのが特長。動物実験では留置から6カ月後にも50 %以上の狭窄や炎症は見られず、良好な結果を得ています」と説明。
「医師が臨床現場で見いだした課題の解決を目指し、日本医療研究開発機構などの支援を受けて、医学と化学、素材、薬学の専門家と連携して研究開発に挑んできました。本治療をいち早く世界中の患者さんに届けたい」と述べた。
小川准教授は、「この治験の成功が、確かな根拠のある治療法を世界に先駆けて患者さんに届けるための鍵になる。一人でも多くの患者さんの下肢とQOLを守るため、必ず成功させたい」と意気込みを語った。
治験に必要な非臨床試験は今年2月に完了し、6月に医薬品医療機器総合機構に治験届を提出して受理された。治験は八王子病院をはじめ、大阪けいさつ病院と小倉記念病院、東京ベイ・浦安市川医療センターの4施設で実施される。
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