News:研究
2021年11月1日号
PEG10遺伝子の胎盤機能維持機構を解明
【医学部看護学科】哺乳類の進化の謎に迫る

医学部看護学科の金児-石野知子教授と山梨大学、東京医科歯科大学の研究グループがこのほど、哺乳類が持つウイルス由来の遺伝子PEG10が、妊娠中期から後期における正常な胎児の成長に重要な役割を持つことを解明。その成果をまとめた論文が9月24日に、国際科学雑誌『Development』オンライン版に掲載された。

PEG10 は、哺乳類が持つ進化上新しい遺伝子。金児-石野教授らはこれまでの研究で、PEG10が太古の昔に哺乳類の祖先のゲノムに入り込んだウイルス由来の遺伝子であり、胎盤の初期発生に必須であることなどを明らかにしてきた。

さらに詳細な働きを調べるため、遺伝子の機能の一部を欠損させた数種類のモデルマウスを用いて解析。PEG10 が持つプロテアーゼ活性(タンパク質を切断・分解する機能)の欠損が胎児のへその緒につながる胎盤内の胎児毛細血管に重度の損傷を引き起こし、母体と胎児の間のガス・栄養交換不全となって胎児の成長不良や致死性につながることを突き止めた。

金児-石野教授は、「PEG10遺伝子の元になったウイルス由来の遺伝子のプロテアーゼ活性機能が哺乳類の進化の過程で巧みに利用され、胎盤構造維持に必須の機能に変化・応用された貴重な事例だと考えられます。すでに、PEG10 と同じ起源を持つRTL1遺伝子がPEG10 と同様に胎盤内の胎児の毛細血管の維持に必須であることを見いだしており、今回の結果から、これらが協調して働いていることも示唆されました」と説明する。

「遺伝子の機能解析は、自由な発想で追究できる最高に面白い“ミステリー”。RTL1 とPEG10 のほか、これまでに同定した9個の関連遺伝子の個々の機能を解明するとともに複数の遺伝子による協調的な作用を包括的に調べ、哺乳類の進化の謎に迫りたい」

 
(写真)金児-石野教授