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特集

2020/07/01
研究室おじゃまします!
各分野の最先端で活躍する東海大学の先生方の研究内容をはじめ、研究者の道を志したきっかけや私生活まで、その素顔を紹介します。

次世代の腸内環境改善食品開発へ

マイクロプラスチックを体外に排泄
海洋学部水産学科食品科学専攻 清水宗茂 准教授

ペットボトルや食品トレー、ビニール袋など、プラスチックは生活に欠かせない存在だ。一方で、近年は5ミリメートル以下の「マイクロプラスチック」(MP)による環境被害が問題となっており、人体への影響も懸念されている。体に取り込まれたMPを排泄させる次世代腸内環境改善食品の開発に取り組む、海洋学部水産学科食品科学専攻の清水宗茂准教授に聞いた。

ゴミのポイ捨てや、下水処理などで完全に除去されずに流出したプラスチックは、細かくなりながら最終的に海へと流れ着く。その量は年間800万トンともいわれている。紫外線や波の力で微細化されたMPを、魚や鳥がエサと間違えて体内に取り込んでしまうことも少なくない。

「ある研究では、2050年には魚より海洋プラスチックのほうが多くなるともいわれています。増加の一途をたどるプラスチックゴミを減らそうと、代替品も活用されるようになりましたが、“軽くて丈夫で安い”3拍子そろったプラスチックを凌駕するものを今すぐ用意するのは難しい」と清水准教授は話す。

私たちが普段口にする魚介類や飲料水、ビール、缶詰のほか、プラスチック容器に入った弁当の中からもMPが検出されているという。「人の体には異物を外に排出する機能があり、便の中からもMPが確認されていますが、仮に体に入っても排泄されるから大丈夫と考えられてきたのです。しかし近年、技術の進歩とともにマイクロメートル、ナノメートルといった単位の、肉眼では見えないMPも測定できるようになり、体内に蓄積されたMPが知らないうちに人体に影響を及ぼしている可能性が指摘されています。海に浮遊していたMPが有害物質を吸着させ、それが体内に蓄積されてがんなどの病気につながる可能性も考えられています」

MPの測定方法を確立 付加価値のある商品を
「企業で食品の開発や栄養学に関する研究に取り組んできたこともあり、整腸作用や中性脂肪の低下作用などがある機能性食品に用いられる『難消化性食素材』を使って、MPを体外に排泄する次世代型腸内環境改善食品を作れないかと考えました」。この研究は今年度の東海大学連合後援会研究助成金研究部門にも採択され、伊勢原校舎にある生命科学統合支援センターの動物部門や、海洋学部と協定を結んでいる海洋研究開発機構(JAMSTEC)の横須賀本部の協力も得て展開していく計画だ。

「初めに、JAMSTECの顕微FT-IRを借りて、MP入りのエサを食べさせたラットの消化管や糞中からMPを測定する方法を確立したいと考えています。その後、特定保健用食品で使われているいくつかの難消化性食素材とMPを混ぜたエサをラットに食べさせ、どの食材がMPを体外に排泄する機能を有するかを探り、商品開発につなげたい」

特保に使われる難消化性食素材は安全性が確立されているため、MPを排泄する機能が認められればすぐに商品開発に進めるメリットもある。清水准教授は、「飲料やサプリメントなど、手軽で携帯性があり、なおかつ腸内環境やメタボなどにも効果のある、付加価値のある商品を作りたい。MPを吸着する性質を応用して、海に浮遊するMPを除去する装置にもつながれば」と意気込む。

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて研究室の学生も清水校舎への入構ができなくなり、実験はストップしているが、「学生にはこの状況もプラスに捉えようと話しています。本実験の前段階である予備試験をするために、過去の論文を読み込むなど、情報収集の時間にあててもらっています。未開拓な分野なので、学生の力も借りながら、他に先駆けて進めていきたい」



Focus
研究で人の健康を支える



「いい素材を選んで提供することで、薬という最終手段を使う前の段階で人の健康を維持できるようにしたい」

食べることが好きで、栄養学を学びたいとの思いから大学では農学部に在籍。大学院を経て、日本ハム㈱、大塚製薬(株式会社)で研究を続けてきた。

「最初に就職した日本ハムでは、研修として営業をしたり、工場で働いたり、スーパーで商品を並べたこともありました」。さまざまな経験を積んで配属されたのが中央研究所だった。卵や牛乳などのアレルギーがあっても食べられるハンバーグや特保の商品開発など“新規事業の種”をつくる仕事に打ち込んだ。

「当時、東京ドームを拠点にしていた日本ハムファイターズの選手たちと一緒にスポーツサプリメントの開発に携わりました。選手たちは肩や肘を痛めながらも、試合に出たいからと我慢していることが少なくなかった。肌にいいとされるコラーゲンは軟骨の働きにも重要で、長期間摂取し続けると痛みが減少するとの研究結果を得てサプリを開発しました」

ただ、ハムや加工食品を扱う会社にサプリの販売経路はなく、在庫の山を抱えてしまった。「当時の社長から、“商品化したのだから頑張って売ってきなさい”と言われて(笑)、全国の高校や大学の運動部に営業をかけ、直接説明にも行きました。作るのも大変だけれど売って利益を得るのはもっと大変だと学べた。今となってはいい経験です」

海洋学部に着任して2年目。「さまざまな仕事を通して、目的やゴールを明確にしたうえで地道に研究に取り組む大切さや、周囲の協力があって初めて前へ進んでいけることを痛感しました。企業で得た経験を生かして、これから社会に旅立つ学生たちをサポートしていきたい」

 
(図)MPの体外排泄作用を有する次世代「腸内環境改善食品」の開発

しみず・むねしげ 1974年静岡県生まれ。東北大学農学部を卒業後、同大学院農学研究科修了。日本ハム㈱勤務時代に広島大学大学院生物圏科学研究科で博士(農学)を取得。

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