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特集

2018/01/01
研究室おじゃまします!
各分野の最先端で活躍する東海大学の先生方の研究内容をはじめ、研究者の道を志したきっかけや私生活まで、その素顔を紹介します。

官民連携でスポーツ振興

“運動しない”理由もさまざま
体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科 萩裕美子 教授

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催がきっかけで、健康経営(※)を目指す企業や運動教室を開く自治体が増加している。働き盛りの20~40代の週1回以上のスポーツ実施率は30%台前半(16年度調査)と低い状況で、どんなアプローチが有効なのか? 体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科の萩裕美子教授に聞いた。
※ 企業が従業員の健康に配慮することで経営面に大きな成果が期待できるとし、戦略的に実践すること

現在日本では、20~40代の働き盛りの世代(ビジネスパーソン)の運動不足が問題視されている。そういった状況を変えようと、スポーツ庁では今年度から「スポーツ人口拡大に向けた官民連携プロジェクト」が動き出した。萩教授は、健康管理学や行動科学の第一人者として参画。この取り組みでは、スニーカー通勤の推奨や歩数を積み重ねて提携店のクーポンに交換できる専門アプリケーションの開発などが行われている。

「仕事との両立ができない、単に面倒くさいと感じてしまう……そんな人に、ただ“スポーツをしましょう”と言っても響かないですよね」

運動をしない、できない理由を調査し、課題解決に向けた政策を打ち出す。東海大学で体育科目が必修となった8年前には、全学年全学部を対象に運動実施率のアンケートをとり、運動をしない理由や興味のある分野を調査したという。

「たとえば、スポーツに関心がない人には『〇〇×スポーツ』というアプローチを考えています。〇〇には、ファッションや観光など若者が興味を持つ要素を入れ、民間企業を中心に展開する。人気アパレル企業がフィットネスウエアを販売したり、地方のスポーツイベントを売りにしたツアーをつくったり、広がりは無限大です」

国民の運動への意識が高まりつつあるものの、ビジネスパーソンが運動を習慣化するには、「仕事の前後に運動する時間を取れるような環境づくりを、企業や自治体が一体となって考えなくてはいけない」と話す。

学生が考える健康経営 中小企業や地方に焦点

そんな中、萩教授のゼミナールに所属する3年生がこの秋、笹川スポーツ財団が主催する「SportPolicy for Japan2017」で中小企業での健康経営を推進する政策案を提言し、最優秀賞を受賞した。日本におけるスポーツの現状や将来への問題意識を持つ全国の大学3年生が政策を提言するとともに、意見を交わすもの。

学生たちは、ビジネスパーソンのスポーツ実施率が低いことに焦点を当て、国と自治体の連携や、助成制度の活用などを提案した。萩教授は、「普段研究室で話していることを学生の視点で考えてくれた。国と自治体の連携をスムーズにし、助成制度を整えていくことがスポーツの普及につながる」と評価する。

大学の地域連携事業 障害者スポーツを普及
東海大ではこれまで、地域と連携したさまざまなスポーツの振興活動に取り組んできた。その一つが「東海大学地域スポーツクラブ」だ。地域コミュニティーの創造やスポーツ振興を目的に湘南校舎の近隣施設で毎月開催し、自治体職員と学生が運営。老若男女問わず参加できるスポーツを自由に楽しめる。

今年度は平塚市立みずほ小学校で、東海大で学ぶ障害者アスリートの講演会も企画した。障害者スポーツの普及を目指す神奈川県から萩教授が依頼を受けたもので、昨年夏のデフリンピック(聴覚障害者の総合スポーツ競技大会)で6個のメダルを獲得した水泳部の茨隆太郎選手(大学院体育学研究科2年)らが登壇。障害者スポーツの競技について紹介し、競技の体験会も行った。

「スポーツ庁の『地域における障害者スポーツ普及促進事業』を神奈川県が実施するにあたり、東海大には何人か障害者アスリートの学生がいるので協力しました。これは国と自治体を通じて、地域のスポーツ振興事業を活性化する成功例の一つだと思います。歩くだけでも、体操するだけでもいい。今この瞬間をどう過ごすかで、明日の体が変わるということを知ってもらいたい」



focus
健康は無形の財産
できることを少しずつ


「過去に何度か健康教室を開いてきましたが、そういう場所には健康な人しか来ない。では、本当に来てほしい人ってどんな人? 来ない理由は? そういった疑問から、現在の研究・調査を始めました」

運動が必要な人のために教室を開いているのに、本人に意志がなければ来てもらえない。スポーツは体力や時間、場所など条件がつきやすく、足が遠のく人が多い。

「何かを新しく始めるにはインセンティブが必要です。スポーツにとってのインセンティブは健康ですが、健康は無形の財産なので、楽しくなければ続けようと思わない。今は継続させるための仕掛けづくりに取り組んでいます」

健康のありがたみは「健康でいるうち」はわかりづらく、「不健康になってから」では運動ができない――そんなジレンマを抱えてほしくないという思いは、昨年、自身が体調を崩してより強くなったと語る。

「長年スポーツや健康をテーマにしてきたのでショックでしたね。原因が自己管理の悪さなどではないことが救いでしたが、体を動かせないことは想像以上にストレスでした。早く元気にならなくちゃと思い、リハビリのウオーキングを夢中でやっていたら、“まだそんなに激しく動かないでください”と看護師さんに叱られました(笑)。運動が嫌いな人も無理のない範囲で、自分の体を大事にする方法を考えてほしいですね」

 
(写真上)ビジネスパーソンのスポーツ習慣づくり
(写真下)萩教授のゼミナールに所属する3年生が最優秀賞を受賞

はぎ・ゆみこ
東京学芸大学教育学部(保健体育)、女子栄養大学栄養学部卒業。女子栄養大学大学院研究生を経て博士(保健学)取得。現在は東海大学大学院体育学研究科長も務める。

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