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特集

2018/07/01
研究室おじゃまします!
各分野の最先端で活躍する東海大学の先生方の研究内容をはじめ、研究者の道を志したきっかけや私生活まで、その素顔を紹介します。

望ましい税金の取り方とは?

通説を覆し新しい方法を提案
政治経済学部経済学科 平賀一希 准教授

日本では現在、少子高齢化が進み、社会保障費が年々増加している。その一方で、制度を維持するための財源は確保できておらず、負担を次世代に先送りし続けている。解決の糸口はあるのか。財政学やマクロ経済学を専門とする政治経済学部経済学科の平賀一希准教授に聞いた。 (取材=小野哲史)

現在、17本の論文執筆を進めている平賀准教授。その中の1つ、「日本の借金はどこまで持続可能か」というテーマは、私たちが身近に感じられる話題といえるだろう。 

「日本は先進国の中で最も高い水準である膨大な借金を抱えています。“このままでは大変だ”と悲観的に議論される一方で、〝まだ大丈夫だ〞という意見もあります。ただし、税金を増やすなり、社会保障制度や働き方を改革するなりしないと、借金は雪だるま式に増えていくのが現実です。その借金を返すための消費税率はどこまで上げられるのかというのが、今、私が力を注いでいる研究です」
 

新古典派成長モデルという経済の一般的な理論では、消費税率が上がれば、税収も右肩上がりに際限なく上がっていくとされているが、はたしてそれは正しいのか―平賀准教授はもう少し違った観点から消費税や税収を捉え、「それらは経済モデルの設定によって変わるのではないか」と考えている。理屈のうえでは税収にはピークがあり、いずれは下がっていく可能性もあるという。

「財政再建などの一つの手段として消費増税が考えられていますが、税率が上がると消費は減ります。そうすると生産も減るため、労働力が減らされ、さらに消費が抑えられていく。相互作用の中で、税率が上がることより消費が落ち込む力のほうが強くなって、ある段階でピークがくるだろうと考えています。国や自治体には法人税や所得税などさまざまな税収がありますから、トータルに考えると総税収のピークは消費税が200%のときとなります。しかし、10%に上げることですらこれだけ苦労しているのですから、この試算はまだ思考実験の域は出ていません」

従価税と従量税を比較 学会で最優秀賞を受賞
1月にタイで開かれた「Eurasia Business and Economic Society」では、47カ国・334人の研究者が178本の論文を発表する中で、最も優れた論文に贈られる「Best Paper Award」を受賞した平賀准教授。この論文も消費税の研究から派生したもので、「モノやサービスにかかる税金として、日本の消費税のように価格に対してかける従価税と、ガソリン税のように量に対して課す従量税が、それぞれ経済に与える影響を比較した」という。
 
ほかにも「税率を上げていくことが最も効率がいいのか」「状況によっては所得税を見直すべきではないのか」「そもそも借金を返さないといけないのか」などアイデアやテーマは多岐にわたり、「経済学の通説を疑い、同じフレームワークの中でどこまで別の考え方を提案できるのかをきちんと考えていきたい」と語る。

研究に終着点なし 課題を解決し新発見を
経済は生活と密接にかかわるものでありながら、「経済学」となると途端にその実体が見えづらくなる。平賀准教授は具体的にはどのように研究を進めているのか。 

「たとえば個人や企業、政府などが織り交ざっているようなモデルをつくり、将来的に私たちの満足度が最大になるように消費や労働、貯蓄の額といったものを計算して解いていきます。経済学は学問体系的に文系に入っていますが、やっていること自体は完全に理系だと思っています。英語で論文を書き、それを海外の学術誌に投稿しては、リジェクト(不採択)のメールが送られてくることが多い。でもそうした結果が次の課題を生み、新たな研究につながっていくのです」と語る。
 
経済学の研究に終着点はない。平賀准教授も自身の目指すべきゴールをあえて考えないようにしている。「理想としては、政府債務の問題や望ましい税金の取り方を考える新たな発見をしたいと思っています。それが私にとっての広い意味でのゴールかもしれません」


Focus
努力し競い合う環境で
学生とともに成長を




バレーボール部に所属し、部活動に情熱を注いだ高校時代は「あまり勉強はしていなかった」と笑う。大学生となった2002年は、バブル崩壊から景気が低迷し、大手金融機関が相次いで倒産して間もなかった時期。「小泉政権が経済の構造改革を進める中で、政治や政策を含め、発生する問題をどうしたら解決できるか、自分自身や日本が置かれている状況にタックルしていきたいと思ったのです」
 
高校で数学の知識はひととおり身につけていたこともあり、大学ではゼミで政策をメーンに研究しながら、「ツールとしての経済分析も面白いと感じ、両立させて考えていました」。卒業後の進路として、民間企業への就職や政策の現場に対する興味から国家公務員も検討したが、講義やゼミナールなど勉学・研究を通じて「政策の話はあまり突き詰めて考えられていない」と気づき、「大学院に進んでもう少し勉強してみよう」と軌道修正。「研究を始めたらいろいろとネタがあり、論文を書くのが面白いと思い始め、いつの間にか日々が過ぎ、こうして取材を受ける今に至っているわけです(笑)」
 
学生を指導する立場となり、特にゼミでは厳しさを持って接している。「努力して、皆で競い合える環境を提供したいと考えています。自分もしっかりやらないと学生はついてきませんから、私にとって、研究と教育の両立は大事です」
 
(図)論文「Fragility in modeling consumption tax revenue」 Kazuki Hiraga and Kengo Nutahara(2018)の試算によると、消費税率5%のときの税収を100とした場合、税率を上げると労働所得税収や資本所得税収が減り、総税収は40%ほど増えたところでピークを迎える

(写真)ひらが・かずき 1983年新潟県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科後期博士課程単位取得退学。慶大経済学部助教を経て、2013年より現職。専門は財政学、公共経済学、マクロ経済学。

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