総合
臨空だより
2021/01/01熊本地震復興への確かな歩み
講義・実習・研究が一体となった学びの場
2023年4月のオープンに向け、東海大学の新しい校舎の建設が始まった。昨年12月21日に、農学部と大学院農学研究科の新しい学びの場となる「九州キャンパス臨空校舎」の整備工事開始に向けた地鎮祭と起工式が現地で挙行された。農学部と農学研究科が置かれていた阿蘇校舎(現・阿蘇実習フィールド)は、16年に発生した熊本地震で甚大な被害を受けた。新キャンパスの建設は震災からの復興にとどまらず、講義・実習・研究が一体となった農学部の特徴ある教育の実現を目指すものだ。
熊本地震で阿蘇校舎の教室棟や研究棟が使用できなくなった後、農学部と農学研究科の授業は熊本校舎で実施されてきた。阿蘇実習フィールドでは、安全を確保したうえで一部の実習授業が展開されている。
しかし、研究室単位での圃場や家畜飼育などをはじめとする実習場の確保が十分でなく、近隣の施設を借用するなど教育環境の充実が課題となっていた。これらの状況に鑑み、学校法人東海大学として検討を重ねた結果、熊本校舎が所管し、熊本県益城町にある「東海大学宇宙情報センター」用地の転用を決定。新校舎として再整備されることになった。
同地は新たな旅客ターミナルの整備が進んでいる阿蘇くまもと空港から約700mと至近距離の立地。新校舎の建設にあたっては宇宙情報センターの建物を1号館として生かし、大小合わせて計31棟が整備される。
敷地面積は全体で11万550平方mあり、新築建物の面積は2万3679平方m、既存建物の改修面積は3404平方m。南北のゲートには来校者を出迎える「芝生広場」と「エントランス広場」がそれぞれ配置される。メーンの建物となる2号館は研究実験講義棟で、中庭の広場を中心に、コミュニケーションスペースも整備される。実習施設3棟、畜舎5棟、温室10棟なども新築され、敷地の高低差を利用して他の建物やフィールドとのつながりも考慮されている。
さらに、熊本地震の経験を生かし、1号館と2号館の一部を災害時の一時避難所に指定し、72時間の電力供給が可能な非常用発電機も設置。ガス空調方式も採用されるなど、停電時の対応にも配慮した施設になる。
農学部では1、2年生を対象とした基礎的な教養科目は熊本で開講し、実習や研究といった専門課程は臨空で展開する予定。新施設の特徴を生かし、複数の研究室が実験室を共用して学生を指導する複数指導教員体制の導入も検討されている。
21日は、東海大学の山田清志学長、荒木朋洋九州キャンパス長ら教職員と学生代表の津田航士郎さん(農学部4年)、熊本県の木村敬副知事、益城町の西村博則町長ら行政関係者、建設関係者ら多数が出席し、地鎮祭の神事が執り行われた。
続く起工式では、山田学長が学校法人東海大学の松前義昭理事長による式辞を代読し、「本校舎が完成する23年は、阿蘇くまもと空港新ターミナルのオープンも予定されています。新しいキャンパスが、このエリアの活性化の一翼を担えれば」と話した。
(写真上から)
▼「臨空校舎」の完成イメージ図。新築されるロの字形の研究実験講義棟の建物に囲まれたエリアはコミュニケーションスペースとして活用される。敷地の西側では圃場の整備が始まっている
▼山田学長(右端)が木村副知事(左端)ら来賓に
▼キャンパスの概要を説明学生代表の津田さんも地鎮祭に参列
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