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総合

2023/01/01

望星丸を活用した災害医療実証訓練

静岡キャンパスと医学部が連携

国内初の試みに挑む

東海大学が昨年11月29日、清水港内三保内浜周辺で、学園の海洋調査研修船「望星丸」(国際総トン数=2174トン)を活用した国内初の災害医療実証訓練に挑んだ。内閣官房が公募した「災害医療における船舶を活用した実証訓練事業」の採択を受け、望星丸利用の有用性と課題を明らかにするために実施したもの。静岡キャンパスと医学部の教職員や学生ら約100人が、10月28日に開いた事前ワークショップでの討議を踏まえ訓練に臨んだ。

 

訓練は大地震発生から約1週間が経過した急

性期から亜急性期における、陸の孤島となっ

た沿岸部地域の被災者に対する支援を想定。

医学部付属病院の災害派遣医療チーム「DMA

T」が三保内浜で患者の治療優先度を決めるト

リアージ

当日は早朝から雨。時折り強い風も吹く悪天候の中、運営や患者役を務める海洋学部と人文学部の教職員や学生、伊勢原校舎にある医学部付属病院高度救命救急センターの医師、看護師からなる災害派遣医療チーム「DMAT」のメンバーらが、三保内浜に集合した。救出想定患者は、上腕や肋骨の骨折、頭部挫傷、車いす利用者、寝たきりの高齢者、喘息や糖尿病、統合失調症で治療中の人、妊婦など、0歳から90歳までの約35人。DMATが一人ひとりを問診・診察し、治療優先度に応じて重症(赤)、中等症(黄)、軽症(緑)に分けて各エリアで診療に当たった。

 

中等症から軽症の患者を東海大の小型実習船

「北斗」で、湾内に停泊している望星丸に

移送

その後、中等症と軽症の患者が、海洋学部の調査などで使われる小型実習船「北斗」に乗船し、湾内に停泊している望星丸に向かった。望星丸と北斗のクルーは慎重に両船を接舷。患者らは手すりにつかまりながら揺れるタラップを渡り、無事に望星丸に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

船内の学生食堂で診察し、治療もシミュレー

ション

船内でもDMATによるトリアージのシミュレーションを実施。点滴液の袋を磁石のついたクリップで鉄の天井に吊るすなど、船の特徴を生かした医療活動を試みた。さらに、段差や階段が多い限られた空間での車いすによる移動や、船内に備えてある海難救助用の担架を使った患者の移送、感染者を搬送する際の動線についても検証した。

 

 

 

 

 

 

訓練完遂を道しるべに 船舶医療展開を推進 

活動できる空間が限られる船内における担架

を使った患者の搬送方法についても確認を重

ねた

DMATの一員として参加した土谷飛鳥医師(医学科准教授)と野口航医師(同助教)は、「船内でも計画していた以上の行為ができるとわかった」と手応えを語った。また、患者役を務めた海洋学部航海工学科航海学専攻の4年生は、「医療従事者の活動を目の当たりにし、被災した方の救助支援も航海士の重要な役割の一つだと認識しました」と話した。

 

全工程の終了後には、この事業を推進する内閣官房船舶活用医療推進本部設立準備室の担当者をはじめ、参加者が望星丸の船内に集合して訓練を総括。付属病院救命救急科の中川儀英診療科長(同教授)は、「望星丸の災害医療活用のポテンシャルを証明する訓練になりました。乗船可能な患者の判断なども今回の訓練を踏まえてさらに検証し、東海大と望星丸の災害医療におけるプレゼンスを高めたい」とコメント。望星丸の上河内信義船長は、「風速は秒速11〜12メートル、波の高さは50センチと清水港内としては風が強く波が高い状況でしたが、北斗との接舷も安全に完了できました。両船は他の場所においても十分活用でき、他の船でも対応可能という実感を持ちました」と振り返った。

 

診療室(学生食堂)からベッドのある部屋ま

で車いすで移動できるかも確認

続いて、同事業のアドバイザーを務める平成立石病院副院長の大桃丈知氏が講評=下囲み記事参照。最後に山田吉彦静岡キャンパス長が、「悪天候の中で一連の訓練を完遂できたことは、事業推進の道しるべになったと思います。関係者と協力しながら船舶医療への展開をさらに進めていきます」と述べた。
 

 

事業アドバイザー・大桃氏が講評 

“プラスアルファ”に期待

アドバイザーを務める平成立石病院副院長の

大桃丈知氏

望星丸クルーによる接舷や、医療従事者のチームワークで医療救護活動を完遂できたのは素晴らしいことでした。望星丸の海底探査機能を生かし、被災直後にDMATを乗せて先遣隊出動に活用できる可能性も感じました。また、ホテルシップ、ホスピタルシップとしての機能に加え、危険な場所から避難させるエバケーションシップとしての機能など、さらにプラスアルファが期待できる、未来のある船だと思います。

 

 

 

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