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特集

2022/10/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

猫たちのQOL向上目指す

【文理融合学部「ねこだんご」】全国のモデルとなる観光地域に

「猫ファースト」の観光地域をつくる――文理融合学部の前田芳男教授(学部長)と村上祐治教授、それぞれのゼミ生らからなるグループ「ねこだんご」が、熊本県上天草市の湯島で猫たちのQOL向上を目指すプロジェクトに取り組んでいる。8月22、23日には現地でフィールドワークを実施。文系と理系の垣根をこえ、“猫好き”たちが取り組むユニークなプロジェクトを追った。

 

猫が嫌がらないように注意しながらメジャー

で体長を測る学生たち

上天草市の江樋戸港から船で25分。有明海の真ん中に浮かぶ周囲約4キロの湯島は、人口約300人に対し約200匹の猫が暮らし、近年「猫島」として注目されている。

 

リーダーの新留誠人さん(経営学部4年)は、「2年前にプライベートで訪れたときに、観光客が際限なくエサをあげていることや、漁師らが猫には不向きとされるイカやタチウオを与えていると知って、健康状態が気になった」と、この取り組みを考えたきっかけを振り返る。昨年11月に事前調査を行い、今年度は公益財団法人日本離島センターの「令和4年度離島人材育成基金助成事業」(活動助成型)の採択を受け、「猫ファーストでありながら、猫を観光資源とした地域づくりを考えていきたい」と本格的な活動を始めた。

 

増子氏(左)のアドバイスを受けて聴診器で

心音を聞く新留さん

事前に動物衛生看護師の増子元美氏から動物福祉の考え方を学んでフィールドワークに臨んだ。前田教授と学生6人は初日、増子氏の指導のもとで猫の体長や体重を測り、聴診器で心音も調査。目ヤニや鼻水、毛づやなどもチェックし、「身体検査表」に記入した。増子氏は「猫が嫌がったらすぐにやめること。医療行為はできませんが、日々の観察で変化を察知し、手助けできることがある」とアドバイスした。

 

 

 

カギは「猫ファースト」 島民とともに活動する

夜には、村上教授とゼミ生が8月5日までに収集した4匹の猫の行動記録をもとに、最も広範囲を移動していた「ロース」が訪れた場所を調査。午後6時以降に長時間滞在していた記録のある場所には夜になると屋台が出ており、住民からも「よくここで食べ物をもらっていた」との情報を得た。しかし、「最近はめっきり見かけないので、亡くなったのではと話していた」「すっかり“ロースロス”です」などの声も。学生たちは、「住民の皆さんは猫の名前や様子を把握していて、ともに暮らしている様子がうかがえた」と話していた。

 

2日目も身体検査を継続し、地域住民や観光客にもインタビュー。秋元あいなさん(同2年)は、「過去に訪れた観光客から“あの猫は元気ですか?”といった問い合わせがあると聞き、動画でも紹介できたらニーズに応えつつ、より多くの人に湯島の魅力を知ってもらえるのではないかと感じました。エサの入っていたビニールのゴミが落ちていたので、観光客側のルールなどもしっかり定める必要があると思います」と話す。

 

今後も身体検査や聞き取り調査などを継続し、島民に結果をフィードバックして猫QOL向上の大切さを伝えるとともに、観光客が入島する際に署名してもらう「猫QOL向上協力宣誓書」も作成する予定。足立萌香さん(同3年)は、「これまで人間にとっての観光ばかり考えていましたが、猫にとってもストレスのない観光の必要性を感じました」と学びを得た様子。学生、島民、観光客が一体となって、全国のモデルとなるよりよい猫島を目指していく。

文系・理系を横断した取り組みへ

文理融合学部学部長 前田芳男教授

 

湯島の猫たちは島民や観光客にかわいがられ、「地域おこし協力隊」として猫の世話をする林愛子さんの働きもあり、ワクチン接種や個体管理も手厚く行われています。

 

昼夜通してベンチで横になり、じゃれ合い、一見とても幸せに暮らしているように見えますが、2、3年で死んでしまう猫も多く、集団で病気にかかることも少なくありません。私たちに医療行為はできませんが、データを集めて分析し、蓄積していくことで、猫にとって最適な環境を島民と一緒に考えていく必要があると感じています。

 

本プロジェクトには今年度新設された文理融合学部の3人の教員が参加しています。私自身は長年離島の観光振興に携わっており、村上教授は情報処理、佐藤綾准教授は医用生体工学が専門です。

 

学生たちとはホームページの開設や猫おみくじなどの販売のほか、島民向けの勉強会や、関係を深めるためのバスケットボール交流試合なども計画しています。約2年かけて文系、理系を横断した幅広い取り組みを展開していきたいと考えています。

 

「住ニャン基本台帳」を制作 ホームページで情報発信 

夏季休暇中も研究室に集まり、村上教授(右)

の指導のもと制作に励む田畑さん(手前)と

田中さん

村上教授と4人のゼミ生はデータベースとして運用する「住ニャン基本台帳」と、一般に公開するホームページの制作を担当。11月の開設を目指している。台帳には、「地域おこし協力隊」の林さんから提供を受けた約80匹の猫の名前や生年月日、避妊・去勢手術やワクチン接種の有無といった基本情報を登録。前田教授らとともに調査した体長や体重などの「健康状態」のほか、「人懐っこさ」「わんぱくさ」「縄張り意識」「出会いやすさ」も5段階で評価して入力する。

 

 

7月23日のロースの行動記録。広い範囲を移動

していることがわかる

ホームページは7つのポイントごとに会える可能性の高い猫を表示し、台帳と紐づけた基本情報や写真に加え、「人懐っこさ」などをレーダーチャートにして掲載する。ページデザインを担当する田畑拳門さん(基盤工学部4年)は、「見やすさと使いやすさを意識しています。写真を並べて表示する際に幅をそろえるなど、プログラムの微調整が難しい」と苦戦しながらも、細部までこだわっている。

 

7月23日から8月5日には、4匹の猫の首輪に「GPSロガー」を取りつけ、30分ごとの位置情報を記録した。村上教授は「西へ東へ移動する猫もいれば、一日中狭い範囲で過ごしている猫もいて、非常に面白いデータが取れました」と語る。

 

田畑さんがデザインしたホームページ

行動記録はホームページで公開する予定で、田中大樹さん(同)は、「観光に来た人が特定の猫を探す際の参考になればと考えていましたが、事前にデータを見た島民の方々から“そんな動きをしているんだ”“知らなかった”と驚きや喜びの声をもらいました。多くの人に見てもらえるページにしたい」と話す。夕方はオレンジ、夜は青と、3時間ごとに色を変え、より見やすい表示方法を模索中。今後は他の猫の行動記録も集め、より充実を図っていく計画だ。 

 

村上教授は、「教科書を見ながらプログラミングを学ぶのではなく、実際に手を動かすことでシステム構築の難しさを感じてほしいと考えています。最後まで作り上げる経験は今後につながるはず」と期待を寄せている。

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