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特集

2018/11/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

地域の課題と向き合い健康を多面的に考える

健康学部「フィールドワークA」

4月に開設した健康学部健康マネジメント学科の1年生たちが「フィールドワークA」の授業に取り組んでいる。春学期の授業を履修した学生たちは5つのプロジェクトに分かれ、5月から9月にかけて神奈川県内の各地で活動。地域の問題を発見し、解決の道筋を考察して実践してきた。10月15日には湘南校舎で報告会が開かれ、学生が学びの成果を発表した。

病気が発見されなければ健康、とは限らない――精神面、経済面、社会的な側面、取り巻く環境などさまざまな要因が合わさって人々の健康がつくられているからこそ、この授業では『健康を多面的に捉える』ことをテーマに設定している。

授業を担当する市川享子講師は、「子どもたちの体力が低下している裏には遊びの変化があり、また、汚染された海や川で育った生物を食べることは健康被害につながります。居場所がなく、孤立する人々をどう支えていくかも健康を維持するうえで大切な問題です。今回は1つのプロジェクトに異なる専門を持つ複数の教員がかかわることで、さまざまなアプローチで“健康”を考えてきました」と語る。

報告会にはプロジェクトに協力したNPO法人や自治体の職員ら「地域パートナー」も多数出席。約110人の学生が10の教室に分かれ、一人6分で活動内容や印象的な出来事、地域の課題、健康な社会の実現に向けてできることを自ら作成した資料をもとに語り、聴講質問にも答えた。

現場に出て自ら体験 新たな発見が生まれる

「プレイパークで遊ぼう!」に参加した伊藤翔太さんは、「横浜市に25カ所あるプレイパークは、子どもが自由に活動できる場としてつくられた野外の遊び場です。けんかをしても大人が止めることはなく、“けんかも学びの一つ”と言われたときは驚きました。体を動かし、友達をつくることは、身体的、社会的、心理的健康につながると感じた」と振り返る。

「湘南いきもの楽校」で地域の子どもの自然体験プログラムの運営に携わった綿野義人さんは、「遊びの選択肢が増えて引きこもりがちな子や、オール電化により火を見たことがない子もいるそうです。昔は当たり前だったことをあらためて経験する場が必要なのでは」と話し、「ソーシャルベンチャー」で横浜市寿町やみなとみらいを訪れた鈴田乃彩さんは、「同じ市内でも全く違う環境で生活している人がいると知りました。高齢者がかかわる場を増やす、デイサービスなどを活用する必要があるのではないでしょうか」と語った。

初めの一歩を踏み出す 将来を考える材料に
発表を聞いたNPO法人「横浜にプレイパークを創ろうネットワーク」理事長の岡野富茂子さんは、「まずは自分が体験してみることが大切。学年が上がってからは研究テーマとして取り組み、広く社会に発信してほしい」と期待を寄せる。

「健康バス」に協力した秦野市こども健康部健康づくり課の深川やよいさんと佐藤真琴さんは、「同じことを見聞きしても、何を課題と感じるかは人によって異なります。学生が地域に参加することで新しい課題が見つかり、一緒に解決することができると感じています」と振り返った。

健康学部では「フィールドワークA」の応用編として、秋学期から「同B」を開講している。前期に学んだ内容を深めたり、課題を見つけて解決策を提案したりと、学生がより自由に実践できる内容だ。さらに3年生になるとデンマークでの研修(フィールドワークC)や、実際に職業を体験する「インターンシップ」の授業も開講される。

市川講師は、「地域パートナーの協力を得て、学生たちは試行錯誤しながらも最後までやり遂げることができ、健康を学ぶ初めの一歩を踏み出せたと思います。今後深く学ぶことで、将来研究テーマに発展させ、社会のイノベーションにもつなげてほしい」と語った。

(写真)この日のために用意した資料をもとに発表する学生たち。秋学期の履修学生も今後の目標を考えるために出席した

春学期に実施した5つのプロジェクト
プレイパークで遊ぼう! ~現代社会における遊びの意義を考える~

横浜市内5カ所のプレイパークで子どもたちの遊びと心身の健康との関連を考えた。プレイパークが、体力づくりだけでなく、子どもたちのコミュニケーション力向上や世代間のつながりづくりにもよい影響をもたらすという社会的健康の観点や今後の課題について多角的に考察した=写真。

はだの子ども支援プロジェクト
ボランティアグループ「ゆう」が秦野市内で実施している、外国につながりのある子どもたちの学習支援に参加。夏休みの宿題などをサポートしながら、日本に移り住んできた子どもたちが安心して健康に生活するにはどうしたらいいかを、日本との文化や習慣の違いも学びながら考えた。

健康バス:秦野・伊勢原の健康増進事業

秦野市と伊勢原市の公民館や自治会館などを会場に、行政や大学院医学研究科ライフケアセンターと協力して「健康バス」を実施。学生は体組成、骨密度、血圧を測定し、検診結果や参加者との会話から健康についての悩みなどを知るとともに、検診に来ない人にどうアプローチするかを考えた=写真。

地域の高齢化や健康課題に挑戦するソーシャルベンチャー
データやフィールド活動を通し横浜という都市でも地域ごとに健康課題が異なることへの理解を深めた。みなとみらい地区と日雇い労働者が多く住む寿町を比べ、人口が増える都筑区と減少傾向の戸塚区の多世代交流サロンを訪問して自治体との協働やソーシャルベンチャーの可能性を学んだ。

湘南いきもの楽校 ―持続可能な社会とwell-beingを探る

「湘南いきもの楽校」が平塚市・馬入川流域で進める生物多様性の保護活動に参加。子どもたちを対象とした自然教室、水質や生物の調査などから、水の循環が人々の健康とどのようにかかわっているのか、そのつながりを考察した=写真。


【学部長に聞く】“自分事”として取り組む
健康学部 堀真奈美学部長

講義を聞くだけでは他人事でも、自分で見聞きし、体験することで“自分事”として考えるようになります。学生には地域に出て実際の課題と向き合い、自分事として取り組み、今後につながる気づきを得てほしいと考えていました。プロジェクトによってアプローチの方法はさまざまですが、健康社会を実現するために必要なコミュニケーション能力や課題に向き合う力、他者と協働する力を身につけてくれたのではと感じています。

少子高齢化が進む今、地域の課題や問題に対面した際に、栄養学と心理学、運動とソーシャルウェルネスなどいくつかの分野・知識、また企業と行政などをつないで形にできる人材が求められています。授業を通して自分に何が必要なのか、何が足りないのかを考え、今後の学びを組み立ててほしいと思います。

 
グローカルフェスタに出展
目指せ! KENKOレンジャー!!

健康学部の学生と教員が10月20日に湘南校舎で「目指せ!KENKOレンジャー!!」を開催した。同日に開かれた「TOKAIグローカルフェスタ2018」の一環で企画したもの=関連記事「第3回グローカルフェスタを開催」。学生と教員が話し合いを重ね、健康学部の学びの柱となる「ソーシャルウェルネス」「メンタルヘルス」「健康と栄養」「健康と運動」を体験できる4つのブースを設置した。

目隠しをして車いすを体験するコーナーや、カウンセラーに扮した学生が「大切なものは何ですか?」と問いかけ、心の支えになっているものを来場者とともに導き出す企画を実施。主菜や副菜などが描かれた「ぬりえ」でランチョンマットを制作したほか、10メートルほど先にある9つのマス目にタオルを置いて、ビンゴをつくるゲームも行った。

すべてを回り終えた参加者には、学生から顔写真と『大切なもの』が書かれた認定証が贈られた。参加した子どもは、「どれも楽しく体験することができました。認定証は思い出になるのでうれしい」とコメント。企画運営に携わった石井伽奈さん(健康学部1年)は、「勉強だけではなく、頭も体も使ったプログラムで楽しみながら健康を学んでほしいと考えていました。子どもたちに教えることは、私自身もいい勉強になった」と話していた。

(写真)目隠しをして車いすを体験した来場者は、「怖かった」「段差を上がるのは難しい」と話していた

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