研究
2024/12/01
東海大学がこのほど、研究成果の即時無料公開を目指す文部科学省の「オープンアクセス加速化事業」に採択された。研究論文を誰もが閲覧できる「オープンアクセス」(OA)の推進と、研究活動の加速化や新たな知識の創造を促す「オープンサイエンス」に向けた取り組みとして公募されたもの。東海大では、学長室を中心に関連する部署や教職員による協働体制を構築。今年7月の採択決定を受け、教職員、研究員、大学院生らを対象としたFD・SDセミナーや学術誌への論文掲載料 「Article Processing Charge」(APC)支援といった取り組みが始まっている。
今回の公募につながる「学術論文などの即時オープンアクセス実現に向けた国の基本方針」は、今年2月に政府の統合イノベーション戦略推進会議で決定された=下記【解説】記事参照。2025年度から新たに公募される国などによる競争的研究費の受給者に対して論文と根拠データの学術誌への掲載後、即時に機関リポジトリなどデータベースへの掲載を義務づける方針も定められている。
公募事業は、研究成果の管理・利活用システム(機関リポジトリ)の開発・高度化や、全学的なマネジメントによる当該システム運用・組織体制強化などの支援が目的。22年に公開・出版された論文数に応じて申請金額に3つの区分が設けられ、全体で93件の応募から83件が選出された。
東海大では申請にあたって、学長室をはじめ、医学部付属病院研究イノベーションセンター、URAオフィスによる「オープンアクセス加速化事業ワーキンググループ(WG)」を結成。23年度から骨子を作成し24年4月に公開した研究者の資料やデータ等の取り扱い方針を定めた「データマネジメントポリシー」と、研究成果の迅速な国内外への発信とその成果の幅広い利活用を目的とした「オープンアクセス方針」に基づいて申請案を策定してきた。
今回採択された事業では、論文のOA化と研究データの管理・利活用の一体的な推進に向けて、研究推進や図書館、情報、経理といった学内部署の垣根を超えた連携で業務にあたる「オープンアクセス推進本部」の設置を目指していく=左上図参照。
WGの責任者を務める学長室の濱本和彦部長(情報理工学部教授)は、「従来は、図書館が学術誌購読を、研究費支援などは研究推進担当が担う、というように縦割りの対応になっていました。しかし、多様な要素を含み、課題への臨機応変な対応が求められるOA推進には、部署間の垣根を超えた体制づくりが欠かせません」と強調する。
すでにWGでは、国際的な有力学術誌出版社との間で、購読料とAPCを一括で支払い、購読料をAPCへ段階的に移行させることでOA出版の拡大を目指す「転換契約」に着手しているほか、既存の機関リポジトリやシステムと新たな外部システムを連携させた論文・研究データの収載・管理・公開システムの構築も始めている。
学内の教員、研究員、大学院生に向けて、責任著者となっている論文の公開に際してその掲載料を全額負担する「APC支援」も展開。来年3月31日までの期間で応募が呼びかけられている。
WGメンバーで、URAの荒砂茜准教授は、「論文掲載料の支出は、限られた予算の中で研究を進める研究者にとって非常に大きな負担になっており、ぜひAPC支援を活用してもらいたい」と話す。また、「OAに関する国の施策、対応にも検討中、構築中のものが多い状況ですが、他大学とも連携して最新の動向をつかみ、対応を図っていきます」と展望を語る。
濱本部長は、「OAでは、研究者はもちろん、学生、大学院生でも、その研究成果が広く世界に発信され、“誰かの目に留まる”機会も増加します。近年、研究者の評価は発表した論文の引用件数で測られることも多く、各研究者にとってチャンスが拡大する取り組みでもあります。文系理系を問わず全ての研究者の利益につながるよう、大学全体で施策を進めていきます」と話している。
公的資金を受けた研究によって生み出された論文やデータなどの成果は国民に広く還元されるべきものだが、それらの扱いはグローバルな学術出版社等による市場支配の下に置かれているのが現状となっている。文部科学省などによると、9年間で大学が負担する学術誌購読料は1.3倍、研究者自身が負担するAPCは5.5倍と高騰が進んでおり、日本の国際的な研究競争力の低下につながると懸念されてきた。
これらの状況の打破を目指し、欧米各国ではすでに公的資金による学術出版物や科学データの即時公開が積極的に進められており、2023年に広島市で開かれた主要7カ国首脳会議(G7)でも議論された。
文科省が展開する「オープンアクセス加速化事業」は、日本でも大学による研究成果の管理・公開に関する体制の充実・強化を図り、産業界等にも開かれた「知へのアクセス」を担保し、研究成果の発信力強化と競争力向上につなげることが狙い。掲載料などの価格交渉を複数の大学がまとまって出版社側と行える体制の構築も支援される。
これによって収載論文数・研究データの拡大、研究成果へのアクセス拡大、優れた研究成果の産業界における活用促進、国際競争力の強化が期待されている。
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