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コラム

2022/09/01
政治、経済、国際関係、医療・福祉、スポーツ、エンターテインメントなど、さまざまなジャンルのニュースや話題の出来事を東海大学の先生方が解説します。

Q.新型コロナのセルフケア、どんな薬を飲めばいいの?

A. 市販の解熱鎮痛剤を。妊婦や小児、持病のある人は注意

医学部医学科内科学系呼吸器内科学 小熊 剛 准教授

 

厚生労働省によると、8月28日現在の国内における新型コロナウイルス累計陽性者数は2000万人に迫っており、7月15日に1000万人を超えてからたった1カ月半で2倍近くまで増加しました。

 

私が所属する医学部付属病院は神奈川県が新型コロナ対策として認定した「高度医療機関」として重症者の治療に取り組んできましたが、現在は重症化リスクのある軽症、中等症の患者も受け入れており、入院患者数は確保しているベッド数を上回る状況です。

 

この第7波の要因となっているのは、オミクロン株「BA・5」系統への置き換わりです。BA・5は免疫を逃れる性質を持ち、感染が広がりやすい一方、重症化するリスクは比較的に小さいとの見解が示されています。

 

こうした状況を受け、厚労省は感染者の急増による医療機関などの逼迫を回避するため、65歳以上の者と、重症化リスクのある65歳未満の者を除き、軽症か無症状の場合は自分で検査した結果をもとに、医療機関を受診せずに療養してもらうという新たな方針を7月末に提示しました。すでに、誰がいつどこで感染してもおかしくない状況ですから、万一に備えて自宅でのセルフケアについて知っておくことが重要です。

 

第7波では、発熱のほか強い喉の痛みを訴える人が多いようです。一般の成人であれば、市販の解熱鎮痛剤の服用で問題ありません。妊婦や小児の場合は、安全性が高く副作用も少ないとされているアセトアミノフェンが主成分の薬を選び、薬のアレルギーや喘息などの持病がある人は主治医に相談してください。熱を下げるための冷却や水分補給も大切です。

 

新型コロナの収束が見えない中、自分に合った解熱鎮痛剤や抗原検査キットを常備するとともに、症状が悪化した際などにすぐに相談できるよう、自治体の窓口を確認しておくとよいでしょう。

 

現在、重症化するリスクのある軽症、中等症の患者に医師が処方する飲み薬には、パキロビッドパック(ニルマトレルビル/リトナビル)とラゲブリオ(モルヌピラビル)の2種類があり、いずれも入院や死亡リスクを低減するために有効とされています。前者のほうが有効性が高いとのデータがあるため医学部付属病院でも優先的に用いていますが、他の薬との飲み合わせの関係で制限があるため、慎重に処方しています。

 

新型コロナの薬については、厚労省が今年5月に、臨床試験が中間段階であっても安全性の確認と有効性の推定ができれば、緊急性や代替薬の状況などを踏まえて暫定的に使用を認める緊急承認制度を設けました。7月には株式会社塩野義製薬が開発した飲み薬が審議さ

れましたが、有効性が推定できないとされて承認は見送られ、今後の動向が注目されています。

 

8月末から徐々に新学期が始まり、児童、生徒や学生同士が接触する機会が増えますが、何よりも大切なのは「感染しない、させない」こと。引き続き、手指消毒や三密を避けて換気するといった基本の対策を徹底してください。

 

ワクチンの3回目接種も、BA・5に対する重症化の抑制には一定の予防効果があるとわかってきました。未接種の人は早めに接種することをお勧めします。

 小熊剛准教授

おぐま・つよし 1966年埼玉県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学助教、アメリカ・ブリガムアンドウイメンズ病院リサーチフェローなどを経て、2012年東海大学医学部講師。16年より現職、22 年より医学部付属病院呼吸器内科診療科長。博士(医学)。