コラム
2020/08/01A.環境問題を解決する糸口とするため
教養学部人間環境学科社会環境課程 落合由紀子 准教授
今年7月1日から、全国一律でプラスチック製の買い物袋(レジ袋)の有料化がスタートしました。レジ袋を扱う小売業者を対象にした法令によるもので、消費者は買い物の際にレジ袋を希望すると、1枚2円から5円ほど支払う必要が生じます。海外ではすでに使用が禁止されるなどさまざまな施策が行われている国が多く、「やっと日本でも始まった」という印象です。
日本は世界的に見ても、レジ袋の大きさや形状が多様で消費量も多い。これは、環境より産業や経済を優先する傾向にあること、製造業の技術力が非常に高いことが要因と考えられます。消費者の利便性を追求する企業の努力もあり、レジ袋だけでなくペットボトルもデザインや飲み口の形状などが工夫されています。今やプラスチック製品は、私たちの生活に切っても切り離せない存在になりました。
しかし、プラスチックの製造に使われる石油には限りがあり、正しくゴミを分別しないと海洋汚染をもたらし、焼却処理は地球温暖化につながります=図参照。レジ袋の有料化は、化石燃料の枯渇を食い止め、環境問題を解決する糸口として始まりました。
長年にわたる議論のうえで有料化が実施されましたが、課題もあります。レジ袋の中でも、厚みがあり繰り返し使える強度のものや、海洋生分解性プラスチックなど自然に還る素材でできた袋は有料化の対象外ですが、〝自然に還る〞素材の定義は現時点であいまいです。「2円から5円程度なら払う」という人も多いでしょう。ただ、私たちにとって身近なレジ袋を対象とすることで、リサイクルの意識や環境保全の必要性を国民一人ひとりに意識づける意味があるのではないでしょうか。
近年では、地球温暖化が原因とされる異常気象が続き、この夏は九州や西日本、東海地方での集中豪雨で大きな被害も出ました。私たちの日常は、このままで持続可能なのか―レジ袋の有料化をきっかけに、皆さんもぜひ考えてみてください。
おちあい・ゆきこ 東京都生まれ。中央大学大学院博士前期課程経済学研究科修了。専門は環境経済学。ゴミ問題や環境配慮的まちづくりを研究。
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