2024年12月08日
学園|総合|教育|研究|学生|付属諸学校|スポーツ|Interview|ひと
コラム
特集
アンケート
Link
【建築都市学部パビリオンプロジェクト】
学生に満足感のある授業を展開
医学教育の新たな挑戦
【文明研究所】アンデスの「音」に迫る
【教養学部芸術学科デザイン学課程】オンラインワークショップを開催
【広報メディア学科】前向きな姿勢を伝える
専門知識の学び深める
【新型コロナ感染拡大防止に向け】各学部学科で独自の取り組み②新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、東海大学では春学期の授業について主にインターネットを活用したオンラインで行うことを4月3日に決定。5月11日から全学で実際の授業が開始された。工学部や海洋学部、情報通信学部、教養学部国際学科で大学史上初の試みとなる遠隔授業の様子を追った。【情報通信学部】オンラインのメリット生かす「教職員と学生が一体に」高輪校舎の情報通信学部では、学部の教員だけでなく、英語や数学などを担当する高輪教養教育センターの教員や事務職員も一丸となって遠隔授業に向けて準備を重ねてきた。教職員一人ひとりがアイデアを出し合って進めてきた遠隔授業を追った。 遠隔授業を受講する斉さん。各授業の受講方 法や課題などは付箋にまとめ、目の届くよう にするなど工夫をしている 情報通信学部では遠隔授業の実施が決まってすぐに、グループウェア「Teams」内に「情報通信学部 遠隔授業」を立ち上げた。グループには同学部の教員だけでなく、英語や数学といった基礎科目を担当する高輪教養教育センターの教員や同校舎の職員も参加。各教員がそれぞれの疑問を書き込み、アイデアを持つ教員が回答しながらキャンパス全体でノウハウを共有していった。学生に対しても、できるだけ自宅学習への不安を取り払おうと学科ごとに頻繁に連絡を取り合った。学生のパソコン所有率を調べた際には、自宅のオンライン環境が整わない学生が5人いることがわかり、品川区内の企業から借りるなど対応を図った。 各授業で工夫を凝らし学習環境を整備授業開始が迫る5月9日、濱本和彦学部長はキャンパスライフエンジンに学生に向けた「オンライン授業のメリット」を掲載した。1つ目に挙げたのは、学生全員が「教室の最前列」で受講できること。組込みソフトウェア工学科の大江信宏教授と大川猛准教授が担当する「組込み開発プロジェクト1」では、小型カメラで撮影した画像をインターネット上にアップするシステムを題材にして、組込みシステムの開発技術を学ぶ。大川准教授は、「学生それぞれの表情を把握できるのはもちろん、これまで質問をしてこなかった学生ともチャットで意見交換ができている」と語る。寄せられた質問と回答は受講学生全体にもすぐに共有。斉一鳴さん(3年)は「質問を送るとすぐに返事をくれるので、安心して授業を受けられている」と語った。濱本学部長が挙げた2つ目のメリットは、授業を何度でも見返すことができる点だ。情報メディア学科の星野祐子講師が担当する「オブジェクト指向プログラミング」ではプログラミング言語「JAVA」について学ぶ。授業の前半では毎回、星野講師が作成したスライドや動画で内容を説明。後半、学生が実際にプログラミングに挑戦する段階で、「前半の内容を動画のアーカイブとしてTeams内に共有しているため、作業中にわからない部分があればすぐに動画で復習できる」と星野講師。受講する涌井翔太さん(2年)は、「動画は授業外の予習復習にも活用できるので助かっています」と語っている。今後の社会を見据える情報通信学の専門家に 「オブジェクト指向プログラミング」の授業 内でもチャット機能を使い質疑応答をしてい る 遠隔授業が始まって3週間が経ち、斉さんは自宅の部屋で「1人で授業を受けていると時間の感覚がなくなる。当然授業が始まるチャイムもないので、携帯のアラームをかけるなど、うまく時間の切り替えができるよう工夫している」と語り、涌井さんは、「通常授業のときは友人と一緒に授業を受けたり、授業間に一緒にお菓子を食べながら雑談したりもできた。昨年度まで当たり前だった日常がとても楽しかったと実感している」と話す。とどおりのキャンパスライフを待ち望む一方で2人は、「時間に余裕ができる分、今までできなかったことにも挑戦したい」と口をそろえる。濱本学部長は学生に向けて「将来情報通信学の専門家として活躍する皆さんには、『今後の社会がどうなるのか』ではなく『どのような社会にするのか』を考えてほしい。通学に使っていた時間や費用を有効に活用して、本やニュースに目を向けてみましょう」とメッセージを送る。「遠隔授業のメリットは教職員が用意するよりよい環境と学生の学びへの積極性があってこそ生まれる。教職員、学生が一体となり、この難局を乗り越えたい」 【教養学部国際学科】NHKオンデマンドを活用国内外の近代史など学ぶ 「基礎ゼミナール2」では、和田講師がファシ リテーターとなり学生が意見や感想を発表。 質疑応答は学生が日ごろから使い慣れている メッセージアプリ「LINE」のグループトーク 機能を用いて対応している 教養学部国際学科では複数の科目で、NHKオンデマンド「まるごと見放題パック」を教材として導入。中でも「NHKスペシャル 映像の世紀」シリーズは、国内外の近代史や社会情勢を取り上げた映像が多いことから、1年生を対象とした科目などで活用されている。和田龍太講師が担当する「基礎ゼミナール2」では5月20日の授業で、第1次世界大戦の様子が記録された『大量殺戮の完成 塹壕の兵士たちは凄まじい兵器の出現を見た』を課題に設定。履修学生13人が授業日までに自宅で視聴し、感想や意見を述べ合った。 授業はWEBビデオ会議システム「Zoom」を用いて開講。初めに和田講師が、「この授業では、今後皆さんが国際学科で勉強していく内戦、人種差別、ジェンダー、民族・宗教といった国際問題の前提となる『国際関係論』について学んでいきます。この学問は、第1次世界大戦の終戦後、二度と戦争を繰り返さない方法を考えようとイギリスで生まれました。この映像を通じて当時の様子を知ってもらえれば」と説明した。学生たちは一人ひとり、「女性の社会進出や国家の独立、植民地の解放など、戦争によって改善されたこともある。今の社会は犠牲の上に成り立っているのだと感じた」「教科書では淡々と事実が書かれているけれど、映像で見る当時の様子は生々しく恐ろしい」など意見を発表。また、「NHKオンデマンドを教材として先生に紹介されるまで、こんなに多様な種類の映像が見られることを知らなかった。遠隔授業は孤独感もあるけれど、一人で集中して映像を見られるメリットもある」といった声も聞かれた。「基礎ゼミナール2」を担当する田辺圭一准教授も、「NHKスペシャル 映像の世紀」シリーズを導入している。リポートの書き方やプレゼンテーションの方法を学ぶ同授業では、毎回映像を指定し、感想文の作成やディスカッションの題材としている。「1年生には歴史上の多様な出来事を、映像を通じて深く印象に刻み、国際学を学ぶ端緒にしてもらいたい」と期待を寄せる。田辺准教授は2年生対象の「応用ゼミナール1」でも、NHKオンデマンドから「NHKスペシャル マネー・ワールド」シリーズを活用。「政治と経済の切り口から国際学を学ぶうえで、親和性の高い映像が多い」という。行動が制限される中でも学術的な学びを深める 和田講師は自宅からZoomをつないで授業 国際学科ではこれまで、海外留学や国際会議への参加、在日外国人との交流など、大学の講義以外でも学びを深める機会を設けてきた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、中止・延期となったイベントが多い。こうした状況で学生からは、「実際に体験できることが少ない分、NHKオンデマンドや参考書などから幅広い情報を得て、今後の研究テーマを考えていきたい」といった声も上がる。 和田講師は、「1年時に国際紛争の歴史を学んだうえで、2年生で理論的なアプローチを学んでいます。自宅での学習は、映像資料や参考書を通じて学問の基礎をしっかり身につけられる。学生たちには、この困難なときだからこそ見識を深め、視野を広げる機会にしてもらいたい」と語っている。 学生モニターの声から
【新型コロナ感染拡大防止に向け】各学部学科で独自の取り組み① 新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、東海大学では春学期の授業について主にインターネットを活用したオンラインで行うことを4月3日に決定。5月11日から全学で実際の授業が開始された。工学部や海洋学部、情報通信学部、教養学部国際学科で大学史上初 の試みとなる遠隔授業の様子を追った。 【工学部】学生との連絡網を確立 学科に応じた方式で開講
【特集】新型コロナウイルス対策2019年末に中国・武漢市から拡大した新型コロナウイルス感染症「COVID-19」。世界保健機関(WHO)によると、3月27日時点の世界の感染者数は46万人、死者数は2万人をこえている。新型コロナウイルスとは何か、どう予防するのか、キャンパスライフで留意すべきことは何か――東海大学医学部付属病院臨床検査科診療科長で院内感染対策室長を務める医学部の宮地勇人教授と、健康推進センターの宮﨑誠司所長(体育学部教授)に聞いた。 医学部・宮地教授に聞く 東海大学医学部付属病院 臨床検査科診療科長・医療監査部院内感染対策室長宮地勇人教授(医学部基盤診療学系臨床検査学)専門は臨床血液学、臨床検査学、遺伝子検査 学、感染症学。 コロナウイルスは人や動物に感染症を引き起こすウイルスです。人に感染するものは6種類あるとされてきましたが、そのうち4種は風邪の原因になるもので、多くの人が6歳までに感染し、そのほとんどが軽症です。重篤な呼吸器疾患を引き起こすコロナウイルスは、2002年に発生したSARS(サーズ:重症急性呼吸器症候群)と12年以降に発生しているMERS(マーズ:中東呼吸器症候群)の2種類が知られています。ウイルスと同様に人に感染する微生物には細菌もありますが、ウイルスは細菌と異なり、自らタンパク質や核酸、エネルギーを作って分裂・増殖することができません。そのため宿主となる動物の細胞に侵入し、その力を利用して増殖します。SARSはコウモリ、MERSはヒトコブラクダが宿主で、遺伝子の変異により人に感染するようになったと考えられています。COVID-19も、コウモリが起源である可能性が指摘されています。見えてきた COVID-19の特徴風邪はゆっくり発症して微熱や鼻水、喉の痛み、咳といった局所症状が数日続きます。インフルエンザは急激な高熱、悪寒、関節痛などの全身症状の後に局所症状が現れます。これに対し、COVID-19は強い脱力感や筋肉痛があり、症状が長く続くのが特徴です。こうした症状が出る24時間から48時間前でも検査で陽性反応が出ることがありますが、WHOによると、この段階では他人にうつす感染源となる頻度は低く、感染してから5、6日後に症状が出ると人に感染しやすくなるとされています。発症から1週間ほどは風邪に似た症状が続きますが、約80%は軽症のまま治癒し、20%は肺炎症状が悪化。2、3%が人工呼吸管理が必要になるなど重症化・重篤化します。インフルエンザは小児の感染率が高いのに対しCOVID-19は低く、糖尿病や腎臓病、心臓病などの疾患を持っている人や高齢者の重症化が報告されています。死亡率は最終的に約2%かそれ以下になると推測されます。現時点で考えられる主な感染経路は、感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)とともに放出されたウイルスを口や鼻から吸い込む飛沫感染と、ウイルスが付着した場所に触ったり握手したりしてうつる接触感染です。厚生労働省は、感染リスクが高いとされる「換気の悪い空間に多くの人が密集し、近距離での会話や発声が行われる場所」を避けるよう注意を促しています。適切な予防実践で 安全性を確保予防のために必ず実践してほしいのがマスクの着用とこまめな手洗いです。外出後は手指を石鹸で洗うか、70%以上のアルコール製剤で消毒します。ウイルスは目や鼻、口の粘膜から侵入するので、手洗い前に顔を触るのも避けましょう。携帯電話やドアノブなど、頻繁に手で触る場所を消毒し、部屋を清潔に保つことも大切です。中国では3月にピークをこえて5月には収まるとの希望的予測が出され、各国も数カ月遅れで同様の経緯をたどるという見方があります。また、ウイルスの変異による根絶や、季節性のウイルス感染症として定着する可能性も考えられます。しかし、予断は許しません。大切なのは適切な知識と理解を持って、「正しく恐れる」ことです。十分な感染予防を実践し、安全性を確保してください。※参考文献『感染症の科学―うつるしくみと予防―』宮地勇人著(東海大学出版会) 日々の体調と向き合う 不安なときは各校舎健康推進室へ