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コラム

2011/05/01
東海大学の先生方が、教育・研究活動などを通して学生と接する中で感じたことをつづったリレーコラム(Back Number掲載中)

問題解決能力を高める学びを実践

健康科学部社会福祉学科 渡邊祐紀 講師

このたび、東日本大震災により被災された方々、関係者の皆さまに心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興を祈ります。今年度も本学は多くの新入生を迎え、学べる環境にあることを感謝しつつ、教員としてもその使命を全うしたいと思います。

伊勢原校舎にある健康科学部社会福祉学科では、社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士の国家資格の受験資格を得ることが可能です。皆さんは「介護」という単語を聞いた時、どのような印象を抱くのでしょうか?

介護とは、単に心身に不自由がある高齢者の衣食住に関するお手伝いをする技術を意味するわけではありません。一人ひとりの高齢者や障害者の心身の機能と同時に「どのような生活を送りたいと思っているのか」をじっくりと考え、専門職として培った知識や技術を活用して、本人とともにいかに実現していくか?を計画・実行していく、非常に創造性の高い仕事です。すべての人が異なる名前を持つように、福祉職に求められる支援は一人ひとりすべて異なり、時間・人・お金などの制限がある中でもできるだけ多くの希望に添うことを目指し、最大限の工夫と努力を重ねています。

3月11日も、介護福祉士を目指す学生さんは福祉現場にて実習中でした。余震が続き、停電と断水、シフト勤務の職員も時間通りの出勤が難しい中、入居している利用者の安全と食事や排泄などの日常生活を維持させるため、介護職員が機転を利かせチームワークよく乗り越えていく活躍を実習生は目の当たりにしました。さらには、帰宅が難しい実習生にも食事と寝る場所の提供等のご配慮をいただきました。震災時の活躍は、日ごろから何をすべきか、どのようにすべきかをチームで考えてきた成果といえるのではないでしょうか。

また、介護の分野に限らず、社会に出た際に「課題解決のために、大学で培った自分の知識や技術を活用できる」「さまざまな制限がある中でも、目標を達成するための計画を立て実行できる」能力を身につけておくことは非常に重要です。指示された内容をこなすことのみを仕事と考える「指示待ち人間」では、変化の激しい社会に対応できません。したがって私の授業では、「必要最低限の知識と技術」を伝えた後、すぐに「今までに学んだ知識と技術を応用すれば利用者の希望に応えられる介護場面」を課題として提示し、グループで挑戦する形式を多く用います。

学生は利用者の希望に応えるために、話し合いと練習を重ねながら知識と技術を磨き、目標を達成する計画を立てる力も高めていきます。これ以外にも、実習施設への電話のかけ方やお礼状の書き方など、社会人として必須の能力を獲得する機会を授業内に盛り込んでいます。最後に、実習施設の指導者が「地震の時には自分も怖い思いをしたのに、落ち着かないお年寄りにずっと寄り添ってくれたり、実習生さんは大活躍だったんですよ」と教えてくださり、東海大生の底力を垣間見て、とてもうれしく思いました。

 
わたなべ・ゆうき 1976年神奈川県生まれ。東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士後期課程満期退学。専門は認知症の人のケアと生命倫理学。

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