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コラム

2013/02/01
東海大学の先生方が、教育・研究活動などを通して学生と接する中で感じたことをつづったリレーコラム(Back Number掲載中)

将来の夢はありますか?

外国語教育センター第一類 土屋慶子 講師

「環境に配慮した、今までにない車を作る」「臨床技師として、多くの患者さんの命を救いたい」「災害時に活躍するロボットを開発する」「大学院に進み、日本史研究の鍵となる新たな遺跡の発掘を進めたい」「NGOなど国際機関の一員として、世界中の貧困に苦しむ人々を助けたい」。私は外国語教育センターで、主に1、2年生の必修英語科目(Reading&Writing/Listening & Speaking) を担当しています。週に2回、学部・学科が異なる学生たちが集い、共に英語を学んでいます。私は学期の最後に必ず学生たちに、「将来の夢」をテーマとした英作文や英語スピーチをしてもらっています。上記は、そのほんの一例です。

英語や多言語によるコミュニケーション能力も含め、学生たちに大学で身につけてもらいたいことは多くありますが、最も重要なことの一つは、異なる価値観を持つ人々と協力して仕事をすることができる能力、つまり多様性を受容する能力であると考えています。多様性を受け入れるためには、自分に自信を持つことが必要です。そして、自分に自信を持つための唯一の方法は、自らの専門性を高めることではないかと思うのです。それは、専攻する学科の内容でも、スポーツでも、趣味の音楽や絵画でもかまいません。自分が将来続けていきたいと思える何かに出合い、それを突き詰めてみること、その過程において他人との協働がいかに大切かを知ること、大学時代にそのような体験をしてもらいたいと思います。

異なる価値観を持つ人々とのコミュニケーションには、留学プログラムなどを通じた、言葉や文化が異なる人々との交流ももちろん含まれますが、さまざまな学部・学科に所属する学友たちが集う、外国語教育センターの授業もその貴重な機会の一つと捉えることができます。たとえば、私が選択科目で教えている「映画で学ぶ英語」では、教養学部、工学部、政治経済学部、体育学部などの学生たちが協力して、英語で台本を作り、役者として演じ、短編映画を製作します。「社会言語学」の授業では、未来のパイロットや、化学、文学を専攻する学生たちが社会と言語の関係について学び、グループで、広告のジェンダー表現分析や日本と海外の新聞記事の比較をし、英語でプレゼンテーションします。

また授業以外にも、国際教育センターと外国語教育センター共催の「国際フェア」では、留学生とその国の言語・文化に興味を持つ日本人学生が集い、各国紹介ブースを準備・運営します。その際、学生たちは、日本語とその国の言語の両方を使いながらコミュニケーションをとり、互いの文化を学んでいきます。

「将来の夢について書いてごらん」というと、「夢なんてない」「まだわからない」という学生がいます。それなら、これから見つければよいのです。興味のあること、好きなことは何か、少し立ち止まり考えてみてください。興味が見つかったら、それに向かって少しずつ進んでみましょう。いずれそれが自らの専門性へ、そして自信へとつながっていくことでしょう。

 
(写真)「映画で学ぶ英語」の履修学生と

つちや・けいこ 1977年神奈川県生まれ。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業。イギリス・ノッティンガム大学大学院英語学研究科博士課程修了。博士(応用言語学)。専門はコーパス言語学、談話・会話分析、医療コミュニケーション、CLIL(内容言語統合学習)など。


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