share

コラム

2012/09/01
東海大学の先生方が、教育・研究活動などを通して学生と接する中で感じたことをつづったリレーコラム(Back Number掲載中)

データに基づいて説明できる専門家を育てる

農学部バイオサイエンス学科 安田 伸 准教授

2008年4月に東海大学阿蘇校舎にある農学部バイオサイエンス学科に赴任し、早くも5年目を迎えました。農学部では1研究室を1名の教員が運営しており、私は食品機能科学研究室を担当しています。着任当時は学内の倉庫や他研究室からロッカー、実験台や椅子を調達したり、実験機材などを融通または借用させていただいたりしていたのを覚えています。そんな中で卒業研究を開始した第1期生たちは、今では各方面で活躍しており、今夏には同窓会を計画している様子。続く卒業生も研究室に足を運んでくれたり、建学祭「数鹿流祭」に顔を出して近況を伝えてくれたり。このような経験もまた教員冥利に尽きるという心境です。

ここで、私どもの研究室を紹介したいと思います。人間を健康にすることを目指す学問は、医学や薬学などが代表的ですが、バイオサイエンスもまた同じ領域にあり、研究室では、人間の病気の予防や軽減に役立つ「食品素材の機能性」と「生理活性物質の機能性と代謝調節」に関する研究を推し進めています。具体的には、「東海大学発高機能性食品開発と大学ブランド化のための基盤研究」や、「食品残渣(ざんさ)の利用研究:おからの抗酸化作用および抗炎症作用」、さらには「アントシアニン含有イモを活用した機能性成分の有効利用に関する研究」など、食品や食品残渣の健康面での利活用に着目した研究に取り組んでいます。

言い換えれば、農学部にありながら健康問題にアプローチし、医学や薬学に近い領域で社会貢献できる学生の育成と研究に務めています。日ごろの食生活で病気を予防・改善する食品や食材の開発は急務の課題です。また、健康に効果のある機能を持った食物は、生産する農家にとっても強い味方です。食品の機能を化学し、データに基づいて説明できるこの分野の専門家は、今後もっと需要が高まっていくと考えられます。

卒業研究においては、学部生でも研究のプロフェッショナルであってほしいと願い、次のような取り組みを積極的に実施しています。研究室に配属が決まった3年生は徹底的にラボトレーニングを積み、正確なデータ収集ができるよう研究に従事する者として基本的な技術を身につけます。そして4年生ではおのおのが研究テーマを持って実験を行い、関連する海外の研究文献のレジュメを作成してプレゼンテーションや質疑応答に備え、グループディスカッションに挑戦します。最終的な卒業研究発表は公聴会形式で行われ、各自が卒業論文を作成します。中には専門学会や産官学連携の技術交流会で発表することもあります。

研究開発職や専門職を強く希望する学生たちは、大学院進学によってよりシビアに情報収集力や分析能力、実行力、そしてコミュニケーション能力を鍛える必要があると考えています。学生たちには、「メリハリを持ってさまざまなことにチャレンジしよう!! でも、笑顔を忘れずに!!」といつも声をかけています。

 

やすだ・しん 1976年沖縄県生まれ。2004年九州大学大学院生物資源環境科学府食糧化学分野修了。博士(農学)。米国の大学で4年間の博士研究員の実務を経て、08年から東海大学農学部バイオサイエンス学科に赴任。専門は食品生化学、薬物代謝化学。

キャンパス展望記事一覧

2013/03/01

勉強が断然楽しくなる秘訣とは

2013/02/01

将来の夢はありますか?

2013/01/01

学ぶべきことは無限にある

2012/12/01

「PBL」で看護技術を育成

2012/11/01

学生が成長できる場をつくる

2012/10/01

商品開発の現場で達成感を得る

2012/08/01

湘南と代々木で2度卒業する!?

2012/07/01

先輩から学ぶ「一次救命処置(BLS)」

2012/06/01

学生の自主的な情熱を発掘したい

2012/05/01

これまでの10年間・これからの10年間

2012/04/01

学生の“居場所”をつくりたい

2012/03/01

模擬裁判で民法の世界を体験

2012/02/01

環境保全に向けて地域と連携する

2012/01/01

最新鋭の実験施設で充実の学びを

2011/12/01

阿蘇校舎・農学部とのデザインプロジェクト

2011/11/01

フィールドワークとコンパと卒論

2011/10/01

人とのつながりを大切に

2011/09/01

目標を持って日々を過ごす

2011/08/01

自由な時間の過ごし方

2011/07/01

お互いに力になれる居場所づくりを

2011/05/01

問題解決能力を高める学びを実践

2011/04/01

持続可能な社会をつくる「環境人材」とは?

2011/03/01

学生とともに「健康」を考える

2011/02/01

英語でコミュニケーションしよう

2011/01/01

一度、「海洋学部」に行ってみよう!

2010/12/01

覚えるということ、考えるということ

2010/11/01

「実学」としての観光学を

2010/10/01

学びながら作る「東海大学検定」

2010/09/01

実践できる学生を社会は求めている

2010/08/01

「集う」とは何かの再確認を

2010/07/01

今しかできないことに挑戦を

2010/06/01

大学はハードルがあってこそ

2010/05/01

「お疲れさま」に覚えた違和感

2010/04/01

「思わぬこと」に飛び込もう!