share

特集

2015/02/01
教育の現場から
話題の授業や地域・企業と連携した課外活動など、東海大学の特色ある教育現場に迫ります。

農学教育実習場のアグラップ

“技”と“知識”を伝授
自主的にスキルを磨こう


充実した実習場を活用して農業に必要なスキルを磨く―。農学部のある阿蘇校舎で2013年度から行われている「アグリ実学スキルアップ支援プログラム」(通称・アグラップ)。同校舎内の農学教育実習場の技術職員らが、“実習”を希望する学生たちに知識や技術を伝授しようという取り組みだ。2年目の活動も大詰めを迎えた1月、キャンパスを訪ねた。

雄大な阿蘇外輪山の一角にある阿蘇校舎は、牧場や農場、動物舎、果樹園、農産加工場などを併設した、全国の大学でも珍しい「牧場・農場併設型キャンパス」。アグラップは、充実した施設をより学生の教育活動に生かそうと始まった。

農学部では、応用植物科学科は農場や果樹園、応用動物科学科は動物舎、バイオサイエンス学科では加工場と、実習場を使った授業が開講されるが、「学生からは実習授業の単位を取得後も、現場で学びたいという声が多くありました」と農学教育実習場の岡本智伸場長(農学部教授)。

一方で、実習場の業務として必要な作業でも、開講時期や受講する学生数の制約などからカリキュラムに組み込めないものも多く、技術職員の間からも「教育に生かせないか」といった意見が出されていたという。

「かつては学生が実習の期間を終えても自主的に出入りし、職員の作業を手伝う様子が見られました。阿蘇の伝統ともいえる光景でしたが、近年の学生の多くは興味があっても自ら積極的に働きかけることが少なく、あまり見られなくなっていました。プログラムが実習場にかかわるきっかけにもなると考えました」と岡本場長は振り返る。


13年度には農学部と実習場、阿蘇教学課、九州企画調整課が協力し、九州キャンパス(熊本・阿蘇両校舎)が学生の教育効果向上などを目的として独自に展開している「教育活動支援プログラム」に採択。初年度は、所属する学科を問わずに選択し受講できる4プログラム21コース=表参照=に延べ200人が参加した。

阿蘇名物も作る充実のプログラム

「タンクから移された牛乳はパイプを通って高温殺菌機に入り、冷やされた後にパック詰めされます」。所狭しとパイプが張り巡らされた加工場の一角で技術職員が学生たちに指導する。「次は何をすればいいですか?」「その作業替わります!」と学生たちの元気な声も聞こえてくる。

阿蘇校舎で作られる牛乳は、飼育されているジャージー牛から毎日搾られたものを、加工場でパック詰めしている。野球部の寮や付属かもめ幼稚園の給食で出されるほか、一部はキャンパス内で販売されている〝阿蘇名物〞ともいえる商品だ。「牛乳の製造は大事な仕事ですが、加工場の広さや工程の関係で大人数で行う実習には入れていません。ただ、この機会に多くの学生たちにこの施設の役割を知ってもらえたら」とプログラム運営を担当する技術職員の伊藤正規さんは語る。

そのジャージー牛がいる畜舎でも学生たちがエサやりに搾乳にと、技術職員の指導を受けながらテキパキと作業をこなしていた。「技術職員の皆さんの仕事をあらためて間近で見られて、理解が深まっています」と嶋村海人さん(3年)は充実の表情だ。

学科の枠をこえて多様な実習に挑戦

現在、実習場の技術職員は11人。岡本場長らと協力して、学生たちにプロの技を伝授している。今年度は2、3年生延べ300人の学生が昨年7月から始まったプログラムに参加し、学科の枠をこえて自ら希望する実習にチャレンジしている。

「学科では学ばないことでも、せっかくの機会なのでどんどん参加したい。授業の履修に合わせて出席できるのも魅力です」と話すのは大芝小百合さん(同)。松並花鈴さん(同)は、「バイオサイエンス学科所属なので、牛や豚などの家畜に触れる機会はほとんどありませんでした。畜舎ならではの道具の使い方も教えてもらい、勉強になりました」と話す。 

伊藤さんたち技術職員は、「私たちの作業を手伝ってもらうことで、こちらも新たな気づきがある。授業指導の改善にも生かしたい」と成果を語る。岡本場長は、「今後も継続していくので、より多くの学生に積極的に参加してほしい」と期待を寄せている。

すべてのコースが終了するのは3月の終わりの予定。新学期の始まる4月には、学生たちが修めたコースが記された修了証が、学びの証しとして農学部長から一人ひとりに手渡される。

(写真上から)
▽加工場で牛乳製造に挑戦。普段の実習では行われない内容だけに、学生たちは誰もが初心者。真剣な表情で説明に聞き入っていた
▽牛舎でのエサやりや乳搾りは実習場での大切な日課。学生たちもきびきびと仕事を手伝う
▽(下部2枚)草刈り機の操作や植物の栽培も学べるなど広範囲なプログラムになっている

 
場長に聞く
自ら行動する力を養おう
農学教育実習場
岡本智伸 場長(農学部教授)

農学部は創設以来、社会が求める人材を育成する学部として「座学にとどまらない実学」を尊重してきました。それは、農業の現場は刻一刻と変化しているうえに、生物や食物を相手にする学問であるからこそ、確かな知識のもとで臨機応変に適切な判断を下せる力を持った人材を育てなくてはならないからです。

学生たちにはアグラップを通じて、そういった力をつけてもらいたい。近年の学生たちは真面目で素直な一方で、受け身で、指示待ちの人が多いように感じています。だからこそ、プログラムへの参加を希望する学生には「自ら判断し、自らの考えで行動する」ことを意識して臨んでほしいと呼びかけています。

アグラップは既存の施設を効果的に使い、意欲ある学生の皆さんの背中を押すプログラムです。自らの力を伸ばす一つのきっかけとして、ぜひ挑戦してもらいたいですね。

教育の現場から記事一覧

2024/03/01

大船渡での経験をつなげる

2024/02/01

「運動」テーマに多彩な企画

2023/12/01

【ソーラーカーチーム】4年ぶりのBWSCで5位

2023/10/01

【ソーラーカーチーム】4年ぶりのBWSC参戦

2023/09/01

【東海大学DAY】グラウンド内外で多彩な企画

2023/06/01

【多職種連携チーム医療演習】学科や職種の枠を超え

2023/05/01

教育・研究と実習が一体に

2023/04/01

【東海大学 2022年度研修航海】

2023/03/01

【建築都市学部版 ものづくり学生サミット】仲間と協力し企業の課題に挑戦

2022/10/01

猫たちのQOL向上目指す

2022/08/01

国際学部「GLOBAL STUDY TOUR A」

2022/07/01

審査を経てデザイン案が決定

2022/03/01

健康学部1期生が卒業へ

2020/12/01

対面とオンラインの併用で

2020/11/01

【医学部医学科】TBLをオンラインで実施

2020/10/01

学際型融合研究が始動

2020/07/01

全学で遠隔授業始まる⑤

2020/07/01

全学で遠隔授業始まる④

2020/07/01

全学で遠隔授業始まる③

2020/06/01

全学で遠隔授業始まる②

2020/06/01

全学で遠隔授業始まる①

2020/04/01

正しい知識と理解で冷静な行動を

2019/06/01

学生の“市民性”を養う

2019/03/01

東日本大震災から8年

2018/11/01

地域の課題と向き合い健康を多面的に考える

2018/10/01

研究成果を通じて大学の魅力を語る

2018/09/01

両国のQOL向上を議論

2018/03/01

地域と連携した多彩な活動

2018/02/01

企業と連携しPR動画を制作

2017/11/01

世界最高峰の舞台で4位

2017/10/01

【健康科学部社会福祉学科】PA型教育に取り組む

2017/06/01

語学や文化の魅力に触れる

2017/03/01

熊本での実践的な学びを地域社会に生かしたい

2016/08/01

学びの基礎と広い視野を培う

2016/04/01

IoT技術とデザインを融合

2016/02/01

生物学部から1期生が間もなく卒業

2015/12/01

産官学連携の強み生かし社会のニーズに応える

2015/11/01

大学の知を地域へ、世界へ

2015/10/01

政治経済学部の自治体インターンシップ

2015/08/01

たかなわ子どもカレッジが本格始動

2015/05/01

HTICの新キャンパスがオープン

2015/04/01

ものづくり学生サミットin湘南

2014/11/01

別科日本語研修課程50周年座談会

2014/10/01

医療短大のデンマーク看護研修

2014/09/01

15回目の節目を迎えたワークショップ

2014/08/01

学生ならではのアイデアを提案

2014/06/01

アクティブ・ラーニングを実践する

2014/04/01

東海大学の新たな地域連携

2014/02/01

観光学部1期生が間もなく卒業

2014/01/01

食品加工や衛生管理を学ぶ