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コラム

2010/06/01
文系・理系の枠にとらわれず、先生方の専門分野や活動から共通テーマについて考察。文理融合の精神が生きる東海大学の教育・研究を発信します
(Back Number掲載中)

「環境問題を語る」③

工学部電気電子工学科 庄 善之准教授

エネルギーの源を考える
太陽光と原子力は温暖化防止の救世主



私は、子どもたちや高校生を対象にした科学教室を担当する機会が多くあります。そのときに、普段使っている電気などのエネルギーは何から作られるのかを参加者に考えてもらいます。エネルギーは無から生まれるものではなく、すべてその源があるのです。現在、電気エネルギーの多くは石油などの化石燃料から作られています。化石燃料の源は何でしょうか?

石油は百万年以上の長い期間をかけて、地中に埋まっている生物の死骸が変化してできたと考えられています。大昔の地球では、太陽からの光のエネルギーを受けた植物が光合成を行い、石油の原料となるエネルギーをその体内に蓄えていたのです。現在、人類はそのエネルギーを使い切ろうとしています。また、化石燃料の大量消費によって大気中の二酸化炭素が増加し、地球温暖化の原因になっています。地球温暖化防止のためには、クリーンエネルギーをもっと多く使う必要があります。

それではクリーンエネルギーの源は何でしょうか?太陽光発電は、太陽からの光のエネルギーを電気に変えています。今、降り注ぐ太陽のエネルギーが植物の光合成を介して化石燃料になるまで待てないので、今すぐ使おうという発想です。風力発電はどうでしょうか? 風は、太陽光によって温められた空気と冷たい空気が対流することで生まれます。風力発電のエネルギーの源も太陽なのです。このように考えると、現在私たちが使っているエネルギーの多くは、化石燃料も含めて太陽が源になっています。現代文明は、太陽の恵みを受けて繁栄していることになります。

クリーンエネルギー技術として、原子力発電も注目されています。原子力発電はウランという原子を燃料にして発電を行い、二酸化炭素を排出しません。エネルギーの源となるウラン原子はいつできたのでしょうか?太陽が生まれる以前に存在していた巨大な恒星(太陽のように光を出す星)が、その寿命を終えるときに超新星爆発を起こし、そのときにウラン原子ができたと考えられています。ウランはそのときの爆発のエネルギーをその原子内に蓄えているため、原子力発電の燃料として使えるのです。人類はそのようなエネルギーを利用できるようになり、太陽以外を源とするエネルギーを手に入れたことになります。原子力発電は新エネルギーとして今後の発展が期待でき、地球温暖化防止の救世主になると考えられます。日本は太陽光発電、原子力発電で世界的に高い技術を有しています。私が所属している電気電子工学科の学生たちは、毎年これらの分野に多く就職しています。私は彼らが持つエネルギーが、現在人類が直面している環境問題を解決する真の源だと信じています。

 
しょう・よしゆき 北海道生まれ。東海大学工学部卒業。東海大学大学院工学研究科電気電子工学専攻修了。専門は材料工学。応用物理学会などに所属。

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