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特集

2014/04/01
研究室おじゃまします!
各分野の最先端で活躍する東海大学の先生方の研究内容をはじめ、研究者の道を志したきっかけや私生活まで、その素顔を紹介します。

東海大学ブランドが続々登場!

特別編・商品開発助成の巻

東海大学ブランドを社会へ――学校法人東海大学総合研究機構が2011年度から実施している「商品開発助成」。今回はその中から、試作品が完成して今年度中の販売に向けた準備が進められている新商品をピックアップ。その特徴を研究代表者の先生方に教えてもらった。

商品開発助成は、東海大学ブランドとして商品化するために必要な開発経費を支援するもの。商品開発を通じて教育・研究活動の成果を広く社会に発信することで、開かれた大学としての社会貢献を目的としている。食品に限らず日用品や衣料・雑貨なども助成対象となっていて、3年間で計14件が採択されている=表参照。これまでに完成した商品については、建学祭や地域のイベント会場などで期間限定販売されている。

商品開発助成の取りまとめをしている研究推進部の山下増男次長は、「いずれも校舎近隣の特産品を利用し、地元企業と連携して開発に取り組んでいるのが特徴です。今後は通年販売も視野に入れ、事業化に向けたサポートにも力を入れていきたいと考えています」と話している。

なお紙面で紹介した商品は、5月28日から6月3日まで東京の新宿髙島屋で開催される『大学は美味しい!!』フェアで販売される予定だ。

伝統技法の放牧で育てる
草原あか牛の飼育法を普及

「近年、牛肉は黒毛和牛に代表される霜降り肉が好まれる傾向にあります。しかしそういった牛を育てるためには運動を制限し、飼料も輸入穀物に依存しなくてはなりません」と農学部の岡本智伸教授は問題点を語る。

そこで、商品開発助成の採択を受けて農学教育実習場を中心に取り組んできたのが、「『草原あか牛eco beef』生産パッケージ」の確立だ。春から秋にかけては阿蘇地域に広がる野草地で放牧し、冬の間は牛舎で草飼料を多めに与えて飼育する。動物本来の要求に合った飼い方をするため、健康的な牛を育てられるのと同時に、阿蘇地域の草原を維持していくことにもつながるという。
 
一般社団法人や企業と連携した今回の助成では多くの商品を試作。本来は商品価値が低い繁殖用の牛を使用した「阿蘇のあか牛草原牛のビーフシチュー」や、12カ月放牧した若い牛を使った「あか牛の赤ワイン煮」など3商品が完成した。岡本教授は、「農家や動物、生態系の幸せを守りながら、生産物の安心・安全、おいしさを併せ持った“地牛”を育てられる手法を、地域に根づかせたい」と語った。

ヤーコンシロップ1日8ミリ摂取で健康に
阿蘇地域に広がる中山間地が、原産地である南米アンデス地方と気候が似ていることもあり、農学部の村田達郎学部長と松田靖准教授が長年、品種改良と商品開発に取り組んできたヤーコン。便秘や脂肪改善に効果のあるフラクトオリゴ糖のほか、ポリフェノールも多く含まれ、機能性食品としても注目が高い。村田学部長らは農学教育実習場と協力し、フラクトオリゴ糖を損なわずに濃縮することに成功。完成したシロップ「阿蘇の秘蜜」は、1日の摂取量である8ミリずつに小分けして販売される予定。

(写真)販売に向けて準備が進められている赤ワイン煮
(ロゴ)今回の商品化のコンセプトロゴは、国際文化学部の伊藤明彦教授が制作した


地元・静岡の特産品を使ってこだわりの金山寺みそを開発

金山寺みそ「駿河湾の香り」は、清水校舎のある静岡市の特産品であるサクラエビと折戸ナスを使った商品だ。海洋学部の落合芳博教授が、市内にある食品加工業者・小倉食品や森下商店と協力して2012年度から開発に取り組んできた。

金山寺みそは静岡県のほかにも和歌山県や千葉県などで作られており、大豆や米に野菜などを混ぜて熟成させる「なめみそ」の一種。ご飯のおかずやつまみとして、そのまま食べられる。

「駿河湾の香り」はサクラエビの佃煮と、3カ月間塩漬けして保存性を高めた折戸ナスを使用。地元ブランド野菜として関心が高まっている折戸ナスは、生産過程で傷つくなどして、そのままでは商品として出荷できないものを使っている。落合教授の研究室で安全性を確認しつつ、学生や教職員による試食を重ねて味を調整してきた。

「未利用の資源を有効活用しつつ、地域の特性を生かしたおいしくて安全な商品を生み出したいと考えました」と落合教授。研究室では今後も企業などと連携しながら、消費者に喜ばれる商品を生み出していく方針だ。

(写真)完成した「駿河湾の香り」。180グラム入り690円で販売される予定。3月4日から学内関係者に向けて試験販売され、初回売り出し分の300個はすでに売り切れている


もう一つの話題
焼酎かすをデザートソースに――“ゼロエミッション”に新商品

農学部が福岡県のコックソース㈱と連携して開発したデザートソース「阿蘇の紅」が、このほど完成した。農学部では荒木朋洋教授を中心に「高度循環型醸造に関する産官学研究~醸造かすを出さないゼロエミッションプロジェクト~」として、2007年にムラサキマサリを用いた芋焼酎「阿蘇乃魂」を製品化。同プロジェクトでは焼酎かすをもろみ酢に、醸造かすを家畜飼料にといった“廃棄物ゼロ”を目指している。

今回のデザートソースもその一環で、焼酎かすを再利用。開発を担当した多賀直彦講師は、「アントシアニンや食物繊維などを多く含む阿蘇乃魂の焼酎かすに、希少糖含有シロップを加えています。焼酎1本分でその倍のソースを作ることができる。焼酎かすに極力手を加えずに作れてゴミも減らせるので、企業や地元に技術を広めていきたい」と話している。

(写真)ムラサキマサリの鮮やかな赤が特徴のソース。ヨーグルトやアイスクリームにかけたり、牛乳や豆乳で割ったりと、用途は幅広い

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