Column:ニュースの扉
2020年6月1日号
Q.新型コロナウイルス対策になぜ移動制限は必要なの?
A.再流行を防ぐためにも有効だから
工学部土木工学科 梶田佳孝教授

新型コロナウイルスによる感染症が世界的に蔓延する中、日本をはじめ各国で市民の移動や密集を大幅に制限する措置がとられました。日本では5月25日に首都圏を含む全都道府県で制限が緩和され、活気も戻ってきているようです。しかし、大学の授業はオンラインで行われるなど、生活への影響は続いています。

では、なぜこのような大規模な移動制限が必要なのか?最大の理由は、今回の伝染病が「新型」だったことにあります。

実は、移動制限と衛生管理の徹底は、未知の伝染病の拡大に対し、人類がとれる最も古典的でほぼ唯一の対策です。治療法が確立されていないためウイルスはすぐに退治できません。そのため、感染源と感染経路をできるだけ早期に特定しつつ、人々の移動を効果的に制限して感染の連鎖を止めるしかないのです。

2010年に宮崎県で牛海綿状脳症(BSE)が爆発的に流行しましたが、その時には病原菌がウ シ運搬用の自動車や作業者の衣類に付着していたことで広がりました。感染経路が、国道などの幹線道路に沿っていたことから、移動・搬出を制限し、車両の消毒とワクチン接種で抑え込みに成功しました。それ以前の02年に東アジアで大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の際も、同様の対策が用いられています。

ただし、人や物の移動量が増えると、再流行のリスクが高まるため、治療法が確立されるまでは、消毒を徹底しながら移動をなるべく控えることが求められます。この対策は、従来の都市や経済のあり方に大きな変革を迫っています。

都市計画の分野では近年、多世代の人々の集いと交流を促し、地域の活性化につなげることが重視されてきました。また、行政サービスの維持・効率化を図るため、特定地域への住民の集住と機能の集約化も進められてきました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大で、伝染病への「減災」という視点から見ても、これまでの都市計画が大きな危険をはらむものだとわかったのです。

今、このときも各地で住民が知恵を出し合って飲食業を応援したり、生活困窮者を支援した りと、街の機能を維持する活動が展開されています。そうした努力に学び、最新の技術を活用しながら、未知の伝染病に強く、活気のある未来都市をどのようにつくっていくか。現代に生きる私たちに課せられた、大きな課題といえるでしょう。

 

かじた・よしたか 九州大学工学部土木工学科卒業、同大学院工学研究科土木工学専攻修士課程修了。博士(工学)取得。2012年、土木工学科に着任。専門は防災、都市計画、交通計画など。BSE発生時の車両の効果的な消毒ポイントの設置や交通状況に与える影響などの交通制御に関する研究を行った。