News:研究
2017/09/01 井上准教授らの成果が論文誌に掲載
2017/08/01 感染症原因菌判定の短時間化に成功
2017/07/01 分析機器のさらなる共有化を目指す
2017年9月1日号
井上准教授らの成果が論文誌に掲載
【医学部】自己免疫疾患治療薬開発に新技術

医学部医学科外科学系の井上茂亮准教授らの研究グループが、関節リウマチや多発性硬化症などの治療薬開発に役立つ新技術を開発。その研究成果が、7月28日午前10時(イギリス時間)に論文誌『Scientific Reports』のウエブ版に掲載された。

ヒトは、ウイルスや細菌が体内に入ったとき、免疫細胞がそれを感知して排除することで体を守っている。そのために重要な役割を果たしているのが血液中にある抗原提示細胞だ。常に血液中を巡り、異物と判定すると2本の腕(α鎖とβ鎖)でつかみ、排除する。α鎖はすべてのヒトが共通の形を持っているが、β鎖は白血球抗原(HLA2)遺伝子の型によって個人ごとに異なる形を持つ。このβ鎖の一部は正常なタンパク質を異物と認識してしまう性質があり、それによって自己免疫疾患が引き起こされる。

井上准教授のグループは、自己免疫疾患に関与する遺伝子型を持ち、特定の化合物と結合したときにのみ発光する性質を持つ細胞(HLA発現細胞)を人工的に生み出すことに成功。さらに、「96Well プレートリーダー」という分析機器上で病気の原因となる抗原ペプチド断片と結合させることに成功し、薬の候補となる96個の化合物の効果をわずか数分で同時に見分けられる「ハイスループット・スクリーニング系」の構築を可能にした。

井上准教授は、「これまでは候補化合物を一つずつ調べていく手法が用いられてきたが、今回の技術ができたことで、さまざまな濃度や分析時間の異なる試料を同時に調べることが可能になりました。また、この手法にはHLA発現細胞を生きたまま観察できるという特徴もあり、より効果的なデータの取得も可能になると考えています。近年は、患者さんの負担を減らすため、個人の体質などに合ったオーダーメード創薬が必要だといわれており、この分野にも貢献できると期待しています」と話している。