特集:教育の現場から
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2016年8月1日号
学びの基礎と広い視野を培う
文学部の特徴を生かした共通科目
幅広い学問群で構成した授業


文学や歴史学、心理学など幅広い学問群からなる文学部で、その特徴を生かした学部共通の教養科目として、「知のフロンティア」と「ことばの世界」が開講されている。学生たちにも人気が高いこの授業の魅力を追った。

「知のフロンティア」一つのテーマを深く考える

「知のフロンティア」は文学部の擁する14学科・専攻の教員によるオムニバス形式で行われている。昨年度まではサブカルチャーなど若者が興味を持ちやすいテーマを取り上げていたが、今年度からリニューアル。今年度は「ことば」、来年度は「時」、3年目には「人」と、一つのテーマについて各教員が専門を踏まえながら語る形式となった。

担当する松本建速教授は、「ことばも時の認識も動物の中で人だけが持っている能力であり、文学部の扱う学問分野の核でもある。各テーマを学びながら、人間や存在について深く考えるきっかけにしてほしい」と語る。

多彩な講義を通じて 新たな“好き”の発見も

今年度は、1年から3年までの約120人が受講。文学部3年の松井優楽々さんは、「さまざまな学科の先生から新しい知識を得られるのが魅力」と語る。授業は、各テーマについて教員が50分語った後、学生たちが授業を踏まえたレポート課題に挑む。松本教授は「講義を受けるだけでなく、得た知識を直ちに活用することで深い理解にもつながる」と話す。

どの講義も教員の経験を盛り込みながらわかりやすくまとめられているのも特徴だ。6月22日には、歴史学科東洋史専攻の立石謙次講師が、中国の少数民族で独自の文字を持たないペー族を例に、言語が消えゆく背景などを紹介。また7月6日には、英語文化コミュニケーション学科の成田広樹講師が「チョムスキーの生成文法」と題して講義=写真。人間の言葉だけが持つ特徴や言語習得と生育環境の関係を語った。

学生たちからは、「各分野を極めた先生の講義を通して、受講前には思いもしなかった視点から考えるのが面白い」(矢田夏稀さん・3年)、「言語は必要だけどそれによって争いが起きるなど、負の側面にも目を向けなければと思うようになりました」(富岡すみれさん・同)、「言語を中心に社会を考えるよいきっかけになった」(小笠原啓さん・4年)といった声が聞かれる。

松本教授は、「将来は、授業の成果を一冊の本にまとめたい。付属高校の副読本などに活用してもらえれば」と話している。

「ことばの世界」文章や対話の魅力に触れる

「ことばの世界」は、言葉の使い方を学ぶ授業として開講されている。担当する村田憲郎教授は、「文章を書くことが苦手な学生が増えている。そうした学生たちに、コミュニケーションの基礎や文章の書き方、面白さを知ってもらうのが狙い」と話す。

授業は初年次教育の一環として位置づけられており、1年生の春学期のみ受講可能。文章表現・コミュニケーションインストラクターの山田ズーニー氏や小説家の辻原登教授(文芸創作学科)のほか、文学やコミュニケーションを研究する教員が担当しており、毎年100人をこえる学生が受講している。 

授業には、グループワークがふんだんに取り入れられ、文章作法などを実践的に学べるのも特徴だ。山田氏の授業では、4回にわたってコミュニケーション法を習得。安達原達晴講師(日本文学科)が担当する文章作法の授業では、7月5日に手紙の書き方の基礎を、実際に友人に宛てて書きながら学習。12日の授業では、古代から現代まで、恋文の歴史を振り返りながら、文化や社会とのかかわりを学んだ。

山本聖子さんは、「他の授業では学べないことばかり。ワークが取り入れられているため、複雑なことも覚えやすい」と話す。また河村萌那さんは、「就職活動や社会人になってからも必要なスキルが身につく。いまのうちに受講できてよかった」と話していた。

学部長に聞く
可能性を切り開くきっかけに
文学部 北條芳隆 学部長

文学部共通科目として開講している「知のフロンティア」と「ことばの世界」は、文学部で学ぶ学生に共通して必要になる知識とスキルを身につける機会となることを目指しています。

「知のフロンティア」では、「観察者」の立場から、ことばや時、人といったテーマの意味や効果を考え、「ことばの世界」では、「使用者」の立場からことば自体の扱い方を学んでいきます。

文学部の学問領域は、社会学や歴史学、心理学、メディア学、政治学などと幅広いため、一見すると互いに独立しているように見えるかもしれません。しかし実は、「人間とは何であろうか」を中心に考えているという点で同じ視点に立っています。

そのことにぜひ気がついてほしい。専門分野を核に据えながら、広い視点を意識して考えられる力、そして表現する力は皆さんの大きな助けとなるはずです。

主体的に学ぶことをあきらめないでください。すべての可能性は、皆さん自身が持っています。授業の内容を踏まえ、ことばや時について自分なりに考えることは、自らの将来への可能性を切り開くことにもつながるはずです。

 
(写真)安達原講師の授業。終了後には、学生たちが手書きの文章がメールよりも効果的だと思う点を考える課題にも取り組んだ