特集:教育の現場から
2011年7月1日号
サイエンス・マイスター育成プログラム
社会の多様な場で活躍する
科学分野のエキスパートを育てる


理学部や情報理工学部、工学部、教養学部人間環境学科の学生を対象にした副専攻「サイエンス・マイスター育成プログラム」(課題代表=平岡克己工学部長)が、4月から本格スタートした。最先端の分析機器の使い方を学び、さまざまな課題を科学的に分析・発信する力を養うもの。この新たな取り組みを紹介する。

このプログラムは、文部科学省が公募する平成22年度「理数学生応援プロジェクト」の採択を受けて準備を進めてきたもの。理学部や工学部の教員が最先端の研究を紹介する導入科目「高度科学技術入門」、最先端の分析機器の使い方を学ぶ「高度分析技術」、研究成果発表の手法を磨く「科学プレゼンテーション」など18科目34単位が開講され、このうち20単位を取得すると副専攻の修了が認定される。

さらに「サイエンス・マイスター認定ゼミナール」を受講し、学会などで研究発表を行えば、東海大学独自の「サイエンス・マイスター認定証」の交付を受けることができる。2012年度からは、「学科課題型AO入試」制度の中で、受講希望者を選抜する「サイエンス・マイスター育成プログラム選抜試験」や、付属高校生対象の推薦制度なども始まる。

科学の奥深さに触れる「高度科学技術入門」

今年度は、「科学者として最先端の技術を開発したい」と高い意欲を持つ学生31人(1年11人、2年15人、3年2人、4年3人)が受講。6月7日に行われた「高度科学技術入門」の講義では、工学部生命化学科の水谷隆太准教授がX線などを利用する放射光科学分野に関する実験施設や研究の様子を紹介した。その後、17号館にある高度物性評価施設に移動。技術職員や大学院生の指導のもと、3グループに分かれて蛍光X線分析装置や電子顕微鏡を使った体験実験に取り組んだ。

施設内にある機器は、本来ならばどれも4年生や大学院生にならないと使うことのできない高度なものばかり。物質の種類や量をわずか数分で解析できる装置などに触れた受講生は、「機器の使い方を勉強し、さまざまな物質を分析できるようになりたい」と意欲を燃やしていた。

理工系の教員が連携し プログラムを企画運営

プログラムの実施にあたっては、全体を統括する「推進・運営委員会」と、具体的な計画の立案や実施を行う「連携・協力委員会」を組織。工学部や理学部などの教職員が、連携して取り組んでいる。また、企業などの協力も受け、商品開発の現場などで活躍する技術者や卒業生が授業や実習の一部を担当する。

連携・協力委員会委員長の利根川昭教授(理学部・学長室次長)は、「本学は創立当初から理工系の人材育成に力を入れてきました。高い意欲を持つ学生の能力を伸ばし、国内外の研究施設や商品開発の現場で活躍できる科学者や技術者を育てるのが狙い」と語る。
東海大学では、これまでも大学院生を対象に「オペレーター認定制度」を実施。高度物性評価施設にある分析機器の使い方や原理に精通し、実験成果を的確に判断できる研究者を育成してきた。

「カリキュラムの作成に当たっては、オペレーター認定制度などで培った教育成果を参考にしました。受講生は実験機器の使い方などを習得し、実験を行うことで、科学者に不可欠な分析力や表現力など総合的な能力を身につけることができます。とはいえ、まだ始まったばかりのプログラム。今後も教職員らの協力を得ながら、さらに充実させていきたい」と語っている。

次世代を担う科学者を目指そう
サイエンス・マイスター育成プログラム 課題副代表
内田晴久教授(教養学部)
 
企業や研究機関では近年、高度な性能を持つ分析機器が幅広く使われるようになっています。その半面、個々の分析機器の仕組みは複雑になり、背景にある科学的な原理や仕組みを理解することが難しくなっています。こうした社会の動向に対応し、高度なスキルを持った人材を育成したいという思いから、今回の副専攻プログラムは始まりました。

他学部の学生と共に学ぶことで幅広い視野を持ち、社会人として活躍する上で不可欠な友人関係を築くことができるのも特徴です。理工系の学問に高い意欲を持った多くの学生同士がこの場を通して切磋琢磨し、将来の日本を担う科学者や技術者として活躍する未来が来ることを期待しています。

受講生の声から
田村紗也佳さん(理学部2年)
講義の中には現段階で理解が及ばない高度な内容もありますが、そのことがかえって「いつか分かるようになりたい」という意欲につながっています。また、各分野の最前線で活躍されている先生方の講義を通して、さまざまな専門分野が互いに関連していることも実感できています。

大矢重宗さん(工学部2年)
自分が学んでいる学科以外の専門分野の講義を受け、他学科の学生と一緒に学ぶことで、一つの学問分野をいろいろな角度から見るスキルを身につけることができると期待しています。高度な分析機器の使い方をマスターし、専門的な勉強や卒業研究などにも役立てたいと思います。

 
(写真上)電子顕微鏡をのぞき込む学生たち。6月7日の体験実験では、入門編として紙幣を拡大して観察した
(写真下)水谷准教授による講義の様子。分析機器の開発にかかわった技術者や、東海大卒業生による講義も行われる予定だ
KeyWord 高度物性評価施設
理工系教員や大学院生の研究促進を目的として、2000年に湘南校舎17号館に開設された。透過型電子顕微鏡や集束イオンビーム加工観察装置など、16種類の高度な分析機器が1施設内に集められているのが特徴で、10年度現在約50の研究室の教員や学生が共同利用している。