Column:知の架け橋
2018年2月1日号
「未来を考える」
政治経済学部経営学科 槇谷正人 教授

思考と対話を重視した教育を
相互に開かれた中で“協働”する


日本のものづくり企業の存在が揺らいできています。“企業は社会の公器”であるにもかかわらず、品質管理や会計にかかわる不正が後を絶たないからです。

日本企業の、自動車や電子機器に代表される技術製品は、世界の多くの人々に高い評価を得てきました。今後、AI(人工知能)の実用化や、IoT(モノのインターネット)の活用、そして、ロボット産業の成長が期待されています。しかし、これらに新規参入する企業においても組織運営面で多くの課題を克服していかねばなりません。

企業には、非生産的な“意図せざる結果”や、非合理的な“不都合な真実”を明らかにするといった誠実な活動が不可欠です。そのためには、現実を受け入れ、社会に開かれた組織文化をいかに醸成していくかが課題解決の糸口となります。これらの課題を探究するのが、経営学における組織論です。

組織論を含む広い意味での経営学は、政治学・経済学・法学・社会学などの社会科学のみならず、心理学・倫理学・哲学や生命の尊厳、さらに、地球環境などの自然科学の成果も組み込んでいます。

経営学の視点から未来の社会を考える場合、人間、組織、社会の3つの階層に分けてそれぞれの関係に着目しています。特に組織に所属する人間の研究については、“労働・仕事・活動”とは何か、哲学的な考察が求められます。企業の組織の研究については、“理念・戦略・制度”の方向性を再確認し、合理性だけではなく非合理性を包摂した取り組みの考察が求められます。そして、特に地球と人間の未来の持続的社会の研究については、他者や他組織と“競争”するのではなく、“協調”することへ、思考と価値の転換が求められます。

これまでの経営学は、競争に打ち勝つことや利益の獲得など、強い立場にある投資家・株主、そして顧客の評価を最優先させた立場から研究を進めることが少なくありませんでした。そこでは、組織の合理性を追求する研究が多すぎたように感じています。

このような視点から組織論の考察対象は、人間関係、集団間の関係にとどまらず、人間と組織、人間と社会の関係に照準を合わせています。さらに近年では、企業のM&A(合併・買収)を中心とする組織間関係、環境経営やグローバル経営の展開における組織と社会の関係にも研究領域を広げています。ここでは、さまざまな非合理性を受容する視点が欠かせないのです。

今後、企業の不正や不祥事を未然に防ぐためにも、社会に開かれた組織をつくり上げるためにも、弱い立場にいる人間と組織を尊重する“経営哲学”が重要です。そのためには、人間、組織、社会は、独自に閉ざされていてはならないのです。未来を創造するためにも、相互に開かれた中で“協働”する、果てしない探究が必要です。

これらの研究内容を経営学科のゼミの教育にも活用しています。それは、学生が未来の社会で幅広く活躍できるようにするためです。今後も、アクティブラーニングによるチームビルディングで、開かれた思考と対話を重視した教育を実践していきたいと考えています。

 

まきたに・まさと 
1957年大阪府生まれ。関西学院大学商学部卒業後、シャープ(株)、産業能率大学総合研究所を経て、明治学院大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。専門は組織論。組織学会、経営哲学学会、日本経営学会、経営戦略学会などに所属。主な著書に『企業の持続性と組織変革』(文眞堂)、『経営理念の機能』(中央経済社)、『経営哲学の授業』(PHP研究所)などがある。