特集:研究室おじゃまします!
2017年11月1日号
衛星観測とSNSを融合
特集・研究最前線
グローカル・モニタリング・システム
防災や減災に役立つシステムを開発

東日本大震災や熊本地震、鹿児島・新燃岳の噴火など、各地で地震や火山噴火が相次いでいる昨今。局地豪雨に伴う洪水に見舞われ、日常生活に影響するケースも増えている。情報理工学部の長幸平教授(学部長・情報技術センター所長)と内田理教授らのグループは東海大学の知を結集し、最先端の情報技術を防災や減災に生かす研究に取り組んでいる。

長教授と内田教授らのグループが進めているのは、人工衛星で観測した画像情報と、ソーシャルメディア(SNS)で発信される情報を組み合わせて、災害時の被害状況や環境変動の様子を把握できるようにする「グローカル・モニタリング・システム」の開発だ。

長教授は、「災害発生時に、衛星画像を用いて宇宙から広域な状況を把握すると同時に、SNSを使って個々人が発信する道路の状況や避難所のニーズなどの細かい情報を得ることで、安全な避難行動や災害対応がとれるようにするシステムの構築を目指す」と話す。プロジェクトは、文部科学省の平成28年度私立大学研究ブランディング事業の選定を受け、5年計画で進められている。

東海大学は1974年に情報技術センターを開設。他大学に先駆けて地球観測衛星のデータを用いたリモートセンシングを手がけ、災害監視、土地被覆状況調査、気象・海況情報収集、宇宙考古学などの分野で国内トップレベルの技術力を誇ってきた。

一方、内田教授の研究室では、学内外の研究者や技術者とともに短文投稿サイト「Twitter」を活用した災害情報共有アプリ「DITS」と、その情報を地図上で表示する「DIMS」を2015年に開発。ツイートする際に携帯端末が受信するGPS情報をもとに『#〇〇市災害』というハッシュタグを自動で付与するシンプルな仕組みで、実証実験に協力した各地の自治体からも「使いやすい」と高い評価を得ている。

内田教授は、「リモートセンシングとSNSの分野を研究している研究者が結集したのがこのプロジェクトの特徴。地震や火山噴火などの激甚災害から、大気汚染の状況観測などまで幅広い活用が期待できます」と語る。

湘南に研究拠点を整備 常時監視もスタート
今年4月には、湘南校舎のTechno Cube(19号館)屋上に衛星電波の受信アンテナを設置。アメリカ航空宇宙局(NASA)の衛星からのデータを2階に設けられたグローカル・モニタリング・センターでリアルタイムに表示できるシステムの運用を始めている。今後は、国内外の関係機関と協力し、火山や海氷を広域に監視するグローバル・モニタリング・システムを構築する。

11月からは、神奈川県と連携して県内3つの高校でDITSを利用した防災教育を実施。こうした取り組みを通じて地域のニーズを取り入れ、人工知能(AI)技術を使ってSNSで発信された情報の中から有益なものを取り出す技術の開発も進めることで「ローカル・モニタリング・システム」の完成を目指す。

安心安全を高め ブランド向上にも
来年度には双方のシステムを統合し、「グローカル・モニタリング・システム」を構築し、災害を想定した連動試験を行いつつ、自治体や連携する研究機関との合同ワークショップを通じて成果を発信していく予定だ。

長教授は、「よい防災情報システムも普段から使われていなければ、いざというときにも使われない。日常生活の中でも便利に使える情報システムにしていきたいと考えています。安心安全に力を入れている地域や大学であることが、双方のブランド力向上にもつながる。その実現に向け、地域と連携して着実に成果を上げていきます」と話している。

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情報技術センター
先端的な画像解析技術を発信


情報技術センターは衛星画像や航空写真、防犯ビデオなどさまざまな画像・映像を解析し、地球環境・災害監視、宇宙考古学などにつなげる技術を研究している。

なかでも長年にわたって力を入れてきたのが、各種観測衛星から送られてくるデータを解析するリモートセンシング技術に関する研究だ。1986年には熊本県に衛星データの受信拠点となる宇宙情報センターを設置。アメリカ航空宇宙局(NASA)や日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた衛星などのデータの受信・処理・解析を精力的に行ってきた。

その一つである海氷観測データは海上保安庁が提供する海氷速報図に活用され、海難事故の予防に生かされているほか、国土地理院やNASAなどでも活用されている。また衛星画像をもとに遺跡を探査する「宇宙考古学」の分野では、秦の始皇帝廟やエジプトのピラミッド発掘などに幅広く利用されている。

情報技術センターでは、そのほかにも画像解析に関するさまざまな基礎研究を展開。筆跡鑑定や防犯ビデオで撮影した画像の高詳細化技術、8Kスーパーハイビジョン映像技術の開発なども手がけている。 長所長は、「画像解析技術へのニーズは今後もますます多様化することが予想される。先端的な研究を重ね、有意義な情報を学内外に発信していく」と話している。

 
(写真上)グローカル・モニタリング・センターに設置されたモニターの前で。左の内田教授が指さしているのがDITS。右の長所長が屋上のアンテナで受信した衛星画像
(写真中)Techno Cube屋上に設置された受信アンテナ
(写真下)1980年に撮影された画像解析風景。当時から高い技術に定評があった