Column:Point Of View
2017年11月1日号
自分の目一杯で臨むタビ
経営学部観光ビジネス学科 高野誠二 准教授

豊かな社会になった今、体も頭も労力も時間もたいして使わずにすむ楽な旅の選択肢があふれています。でも誰かが作った誰かの道を歩むタビと、自分で道を創って進むタビとは、似て非なるものです。

今までで一番準備を尽くした旅がありました。私の大切な人、祖母へプレゼントした旅です。祖父に先立たれて寂しそうな祖母を誘って、当時よく家族皆で旅しました。足腰が弱って歩けなくなっても、兄と私と二人で抱きかかえて車椅子に乗せては旅して回りました。いっそう体が弱り遠出できるのもいよいよ次が最後かという時、とっておきの旅に出ました。それは祖母の人生を再訪する旅。私は十何年も前から、ゆかりの場所を調べて探してきました。

名古屋では生家の跡にたたずみ、通った小学校や女学校を訪ねました。新婚旅行で行った蒲郡の海を一緒に眺め、戦時中に疎開した伊那の山村では、祖母も母も当時の苦労話を聞かせてくれました。

一番のハイライトは、祖母にとっての祖父、私の高祖父のお墓参りです。こちらの親戚とは連絡が途絶え、お墓の所在も不明でしたが、情報を求め続けてようやく見つけたのです。事前に一度、岐阜市の外れにあるそのお寺を訪ねました。長年の探し物をついに見つけ、大喜びで現地に着くと、びっくりしたことに、広大な墓地に立ち並ぶ墓石が高祖父と同じ苗字の「澤田家」だらけ。これでは見つからないでしょ……と愕然としつつも、文字もかすれた古い墓石を一つひとつ、かみさんと手分けして探してついに発見。それから2年経った今回、祖母を連れての再訪でした。

まだ幼かった1931年におじいさんを亡くしてから一度もお墓参りできないままだった祖母にとって、80年以上経っての再会でした。この旅の後ほどなくして祖母は自力で起き上がることもできなくなり、タビは終わってしまいました。自分が成長して一人前になれたのも、家族や親戚皆のおかげです。自分の仕事ならではの知識や力を発揮して、自分ならではの恩返しや孝行ができるタビを創れた私は幸せ者です。

自分の目一杯の何かを形にするオリジナルなタビ作り、一度挑んでみませんか?

(筆者は毎号交代します)