Column:Point Of View
2017年10月1日号
いま考えてほしいエネルギーのこと
理学部化学科 冨田恒之 准教授

2011年に東日本大震災があり、津波により東京電力福島第一原子力発電所が機能を停止した。多くの国民が節電を強いられ、エネルギーについて考える機会が増えた。日本では現在、原子力発電以外にも水力、風力、太陽電池、火力などが利用されている。

水力、風力、太陽電池はいずれも再生可能エネルギーである。太陽光によって蒸発した水が雲になって山に雨を降らせる。水力発電はこの水の位置エネルギーをダムに貯め、放水して発電する。風は、地面や海面の温度差によって生じ、温度差の源も太陽光である。風力発電はその風で発電機を回す。どちらも少し前の太陽光を利用している。

太陽電池は、太陽光を利用していることを実感しやすいだろう。水力や風力と異なり、電力として利用するまでのタイムラグが基本的にない。

日本ではあまり普及していないが、国土の広い国ではバイオマスの利用も盛んである。たとえば、サトウキビが光合成で蓄えた糖分から酒の製造と似た手法でアルコールを作り、それを車の燃料にする。これも再生可能エネルギーの一種である。

対して化石燃料を利用する火力発電は再生可能エネルギーではない。化石燃料の大本は太古の動植物であり、バイオマスに近い。しかしそのエネルギー源は太古の太陽光であり、いずれは枯渇する。

原子力発電ではウランなどの放射性元素が使われる。これらの元素は恒星の超新星爆発により生じるといわれている。原子力のエネルギーの大本は、地球ができる前、太陽ではない別の恒星が爆発したときのエネルギーで、再生可能エネルギーにはならない。

幸い太陽はこれからも数十億年ほど輝いてくれる。太陽光をうまく利用する術さえ確立すれば、エネルギーに困ることのない世界が到来する。飛行機のない時代に空を飛ぶこと、電話のない時代に地球の反対側の人と話すこと。人類がこれまで成してきたことを考えれば、近い将来にエネルギーについて考える必要がない世界が来るかもしれない。だからこそ、今、エネルギーについて考えてほしい。

(著者は毎号交代します)