特集:教育の現場から
2017年10月1日号
【健康科学部社会福祉学科】PA型教育に取り組む
ボランティア活動を通じて

東海大学では、学生が地域社会の課題を解決し、市民性を獲得していくパブリック・アチーブメント(PA)型教育の導入を推進している。2018年度にはカリキュラムを改訂し、さらなる浸透を図る計画だ。その中で、健康科学部社会福祉学科はボランティア活動によるPA型教育を進めている。ソーシャルワークの視点からシチズンシップを養成する同学科の取り組みを追った。

同学科では、専門科目「ボランティア論」と「ヒューマンサービス演習3」を連動させたPA型教育を実践している。

今年5月には履修生が、都内でホームレスの支援活動を行っている「スープの会」と、秦野市で外国出身の子どもたちへの学習支援などを行う「はだの子ども支援プロジェクト『ゆう』」の活動を体験。自分たちが各団体にどのように協力できるかを考えた。

「成果を自分で直接確かめられるのがボランティア活動による現場学習の醍醐味」と授業を担当している妻鹿ふみ子教授は話す。

「『スープの会』に対しては体験させてもらったお礼として、古着を集めて販売したお金を寄付。『ゆう』では子どもたちが楽しみながら日本語を学べるすごろくを作って喜ばれました。自分が社会の一員として役に立っているという手応えを感じることでモチベーションが上がり、次の活動へとつながっていきます」

妻鹿教授はまた、「社会貢献活動の実践者の考え方や人間力に触れることも重要」と指摘する。

「夏休みに『平成28年熊本地震』で被災した南阿蘇村の高齢者施設でボランティアに従事した際は、高齢化が進む集落で人々がつながれる場をつくろうと、東京から移住してカフェを開いた起業家からも話を聞くことができました。その姿を自身の未来に重ね、犲分にも何かできる〞と気づくことも大切です」

自主性を促すきっかけをつくる

妻鹿教授とともに指導している市川享子講師も、「きっかけをつくると学生たちは動き出す」と語る。活動の基盤をつくるため民間の助成制度について情報を提供したところ、学生たちが応募。学習支援に取り組むチームは日本財団学生ボランティアセンターの「Gakuvo Style Fund」、南阿蘇村で活動するチームは同ファンドと、Yahoo!基金の「夏休み『学生ボランティア』被災地復興活動支援助成プログラム助成金」に採択された。

中心になって応募作業を担当したのは、牧野大樹さん(大学院健康科学研究科1年)と原田悟司さん(同)。牧野さんは、「後輩と議論し、協力し合って書類を作成することで、目的や今後の展開が明確になった。ボランティアを通じて人の輪、活動の場が広がっていくのがうれしい」と話す。

活動を振り返り学びにつなげる
南阿蘇村で活動した学生たちは、市川講師の指導のもと、9月21日に「振り返り」を行った。「教室での学びと現場での経験をどのように関連づけて自分のものとしていくかが大切」と市川講師は力説する。

学生たちは、「参加前の思い」「現地での学び」「今回の経験を大学での学習やソーシャルワークを含めた社会における実践としてどう生かすか」について発表。梅村友里恵さん(1年)は、「人々が求めていることを自分の問題として捉えることができました。固定観念や思い込みを捨て、広い心で相手を受け入れる大切さも学んだ」と真剣な表情で話す。

現在、学生たちは、現場の状況や経験を伝え、人や地域をつなげて活動を広げるための具体的な方法について議論を進めている。医学部の学生らと協働し、南阿蘇村での活動について報告会を実施するなど、学部をこえた連携も図りつつある。

学部もPA型教育のさらなる展開を目指し、9月20日に大学院と合同でFD研修会を開催。市川講師がPA型教育の意義や成果、これまでの取り組みを紹介した。

「社会の変化に伴い、大学も求められる役割を果たすための変革を迫られている。大学の地域連携を促進し、学生の市民性を育てるPA型教育の意義は大きい」と市川講師。「学生が社会に参画し、問題を発見して解決していく実践的な学習をさらに充実させたい」


フィールドで培う福祉のまなざし
学科主任 堀越由紀子教授
実習が現場のスタッフと教員の指導で特定の技術を学ぶのに対し、ボランタリーな活動は社会の課題解決に向けて自由に自主的に意見を出し合い、実践するという点で、同じ学外学習でも目的が異なります。

福祉の現場では、社会の矛盾や理不尽さを正面から見つめ、一人では解決することのできない課題と痛いほど向き合うことが求められます。そこから感じ、考え、人々と協働しながら当事者をサポートしていかなければなりません。

こうした“ソーシャルワークのまなざし”は、現場に出てこそ培われるもの。ボランタリーな活動を通じたPA型教育は、来年度に新設される健康学部にも引き継いでいくべきと考えています。


【Pick up】2年目の南阿蘇村ボランティア
福祉施設の企画を運営

熊本地震の被災地にある高齢者施設をサポートしよう―昨年度に続き、2度目の実施となった健康科学部生による南阿蘇村でのボランティア活動。学生たちが、村内でグループホームや住宅型有料老人ホームなどを運営する蠧邂ち疋吋▲機璽咼垢鯔問するもので、今回はソーメン流しや秋祭りの企画運営に携わった。

学生たちは5人ずつ2班に分かれて活動。8月28日から9月1日に訪問した前半グループは1年生の女子学生5人が、ソーメン流しで施設利用者を楽しませた。後半グループは9月12日から16日まで熊本に入り、秋祭りの準備を担当。看板づくりや会場の装飾に汗を流し、15日の祭り当日は、メンバーの伊東俊哉さん(2年)が地元のお祭りで取り組んできたという「獅子舞」を披露し、参加者から歓声が上がっていた。

リーダーの石田佑典さん(同)は、「現地の方たちと話す中で、人と人のつながりが大切であり、その絆が復興につながっていくと感じました。今後も支援を続けられれば」と話していた。

 
(写真上)ボランティアの経験や学びをどのように伝え、活動を広げていくかを真剣に話し合う
(写真中)子どもの学習支援に取り組む牧野さん
(写真下)伊東さん(左)の獅子舞に合わせて、ほかのメンバーもステージで踊りを披露した