Column:Point Of View
2017年2月1日号
南アフリカのワインと黒人労働者
教養学部国際学科 荒木圭子 准教授

南アフリカのワインを飲んだことがありますか? 南アフリカはアフリカ大陸の最南端にある国で、大西洋とインド洋が交わる場所にあります。交易の補給地として発展したケープタウンは地中海性気候で、17世紀にヨーロッパから移住してきた「アフリカーナー」と呼ばれる人々によってワイン産業が発達しました。

南アフリカでは、アフリカーナー政権によってアパルトヘイトと呼ばれる人種隔離政策がとられていましたが、1994年に完全撤廃され、ネルソン・マンデラが初の黒人大統領となりました。

しかし、政治的に人種平等が達成されたのちも、経済的には白人優位が続いています。黒人の富裕層(そして白人の貧困層)も一部存在しているものの、黒人全体の失業率はおよそ30%にものぼり(白人は7%)、人種間の経済格差は解消されていません。

ワイン業界も例外ではなく、醸造所や農園の経営者は白人、そこで雇用されている労働者は黒人、というのが一般的です。白人経営者が豪華な家に住む一方で、黒人労働者の多くは低賃金で、電気も水道も通っていないような家に住み、殺虫剤にさらされながら農作業を行っています。

経済的な人種格差を是正するため、南アフリカ政府は、黒人をはじめとするマイノリティーの雇用やビジネス参入を後押しする政策を導入しました。その影響で、ワイン業界にも自分で事業を興す黒人の姿が見られるようになっています。また、白人経営者の中には、これまでの慣習を破って、雇っている黒人労働者に農地の一部を分け与えたところもあります。

まだ数は少ないものの、黒人の農園主、黒人のワイン醸造家などが次第に出てきました。彼(女)らによって作られたワインの多くは、フェアトレード商品となっています。

今度、ワインを買うときは、ぜひ南アフリカのフェアトレードのワインを探してみてください。アパルトヘイト撤廃後も自らの権利獲得のため闘い続けている黒人労働者たちにつながっているワインです。

(筆者は毎号交代します)